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148回目 武装部隊のよくあるやりとり

「来るかな……?」

 第二大陸一井物産開拓事業部。

 その一角にある武装部隊の詰め所で、立橋タクミは不安を懐いていた。

 それは他の隊員も同じである。

「それが仕事だからなあ」

「行かされるだろうよ、そのうち」

「早いか遅いかの違いだけだな」

 誰もが重い気分でいた。

 それもそうだろう。

 彼等に耳にも巨人達の事は入ってきている。

 正確なところは分からないが、噂話程度ならば様々な事を聞く。

 それらが不安の原因になっていた。



 未踏の地域の探険や探索に武装部隊が駆り出されるのはいつもの事だ。

 その為に様々な武器・兵器を保有してるのだから。

 モンスターの脅威に対抗出来るだけの火力がある彼等は、常に最前線に放り込まれる。

 それが分かっていてこの仕事に就いてるのだから文句は言えない。

 だとしても危険は避けたいものだ。

 覚悟はしていても死にたいわけではない。



「出来れば空から写真撮るだけで終わってほしい」

「そうなれば最高だな」

「わざわざ近づく必要もないだろ」

「外から見て、危ないと思ったら近づかない。

 それが一番だ」

「そうだよなあ」

 口々に勝手な事を言っていく。

 それらは紛れもなく彼等の願望である。

 だが、それが叶うものではないと分かってもいた。

「まあ、もっと情報が欲しいとか言い出すだろうし」

「言わないわけがない」

「どうせ飛ばされるんだろうよ」

「せめてボーナス出してもらわんと」

「査定、上げてくれないかねえ」

 どうせ行くならそれくらいはしてもらいたかった。



「あと、交戦規定」

「だよなあ」

「もっと簡単に撃てるようにしてもらわないと」

「相手が何かしてくるまで待てって言われてもな」

「待ってる間に殺されたらたまらねえよ」

「なんで反撃が基本なんだろうな」

「ばかばかしい」

 そういう愚痴も出て来る。

 武装部隊の基本的な行動は、反撃である。

 相手が攻撃してくるまで待つ事が求められている。

 そうしてからの反撃ならば、正当防衛として認められている。

 さもなければ、事前に脅威と分かってる場合だ。

 モンスターなどがこれにあたり、これらは見つけ次第先制攻撃を仕掛けてもよい事になっている。

 ただ、今回新たに発見された巨人はそうではない。

 相手がどういった者達であるのか判明してないので、通常の交戦規定が適用されている。

 それが不安の原因になっていた。



「けど、律儀に守るつもりなのか?」

「まさか」

「そんなわけあるか」

「やられる前にやるに決まってる」

 誰もが口々にそう言っていく。

「わざわざあんな規定守るかよ」

 それがこの世界の常識でもあった。



 命がけの生存競争を強いられる世界である。

 反撃を待ってるような馬鹿はいない。

 危険と思えば即座に攻撃を仕掛けて相手を倒す。

 そうして脅威となる存在を殺さないと自分が殺されるのだ。

 悠長な事をしてるわけにはいかない。

 その為、実際には交戦規定のほとんどが死文化していた。

 当然だろう。

 規定や法律に殺されてはかなわない。

 よりよく生きる為に規定や法律はあるのだ。

 それを阻害するなら、法律は存在する価値が無い。

 悪法は法ではないのだ。

 少なくともこの世界では。

 そして、規定を無視した先制攻撃が咎められる事は無い。

 咎めれば、そんな事をした者が殺される。

 それがこの世界における不文律だった。

 生き抜く為の智慧である。



「危なくなったらその時は、な」

「分かってるって」

「命あっての物種だ」

 そう言いながらタクミ達は笑いあう。

 少しだけ不安が取り除かれた。



 そんな彼等に出動命令が出たのは、それから数日後だった。

 誰もが我が身の不運を呪った。

 そして、これがボーナスに結びつくよう願った。

 上司にも訴えた。

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おまえら、教えやがれ
  ↓
  ↓
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/479725667.html

『ピクシブのブースを使ってるので、その事を伝えておかねば』
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/477601321.html

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