146回目 新勢力への観測・偵察 3
巨人の観測を始めて数週間。
遠巻きに観察や観測をしていただけであるが、彼等の行動は少しずつ画像や映像で記録されていった。
それらをもとに分かってきた事から、分析も始まっていた。
まだ推理や推測の段階を超えないが、それでもある程度の予測や予想も出て来ていた。
彼等の行動から予測される思考形態。
持ってる道具などから推測される文明程度。
あくまで地球人類に当てはめてみた場合ではあるが、大雑把な予想は幾つか出てきていた。
基本的な文明程度はさほど高くは無い。
鉈や斧、それに弓などを用い、着てる物も粗末な布で出来ている。
彼等が使ってる住居に、垣間見える食事で使ってる食器なども洗練されたものではない。
金属器を使ってはいるが、生活そのものは人類より千年ほど遅れてるように見えた。
キャンプを楽しみにしてるというならともかく、そうでないならばさほど発達してるようには見えなかった。
ただ、娯楽として野外生活を楽しんでるというわけではなさそうである。
定期的に周辺の巡回に出てるし、住居内での行動も統率がなされたものだった。
行動から何らかの指揮系統があるのが見て取れる。
娯楽であるならば、そこまで厳格な行動様式をとる必要は無いはずである。
また、巡回以外でも外に出る者達の姿も見られた。
それらは住居を数日離れて周辺を探索して帰還していく。
その際に、荷物から筆記具を取り出して記録をとっている。
おそらく探索をしてるのだろうと思われた。
彼等は彼等でこの世界を調べようとしてるらしい。
何より驚いたのは、その戦闘力である。
体の大きさ故に相当な体力があるのだろうと予想はされていた。
実際、モンスターに遭遇すれば臆すことなく立ち向かっていく。
そういった戦闘場面も撮影されている。
そんな彼等は体格の大きさもあってか、通常のモンスターなどものともしない屈強さを見せた。
全長8メートルくらいの恐竜ならば、手にした斧や鉈で簡単に叩きのめしていく。
全長20メートルを超えるドラゴンやベヒーモスなどでも、数人がかりならば倒してしまう。
空を飛ぶ巨鳥は、巨大な弓で対処していた。
その飛距離はゆうに1000メートルに到達し、迫る巨鳥を難なく射貫いていった。
そんな彼等はそれなりの脅威になると判定された。
少なくとも、肉体能力では地球人類を大きく凌駕する。
何せ、地球人は銃を持たなければモンスターに対処出来ない。
それだけ大きな差がモンスターとの間にはある。
巨人はそれを難なくやってのけるのだ。
丸腰で相対して勝てるわけがない。
ただ、決してかなわない相手でもない。
銃を持ってるならば対処は可能だろうと考えられた。
モンスターとの戦闘ではそれなりに負傷をしている。
そこから、肉体の頑丈さを推測するに、銃弾も有効だろうと考えられた。
分厚い筋肉で銃弾が弾かれるという事はなさそうだった。
とはいえ、さすがに拳銃程度では効果が薄いとも考えられた。
当たり所によるだろうが、それでは一撃で倒す事は出来ないだろうと。
まとめて何発か当てれば効果はあるだろうが、基本的に歩兵銃弾くらいでないと効果は見込めない。
つまりは、恐竜などのモンスターと同等と言える。
あくまで予測や予想の範囲であるが、巨人についてはこう考えられている。
これが当たってるのか外れてるのかはまだ分からない。
観測から考えられる事は限られる。
真相は巨人をとらえて調査しなければ分からない。
そんな巨人達の中で興味を引くものがあった。
彼等より遙かに小さい、地球人類と同じくらいの大きさの人だ。
それが巨人達の中にいた。