144回目 新勢力への観測・偵察
第二大陸の最前線。
大穴からはそれなりの距離のある場所に作られたそこには、人類側の拠点が建設されていた。
とはいえ規模はさほど大きなものではない。
急造で作られた即席のもので、プレハブやテントなども見える。
まだまだ建造途中なのは一見してあきらかだった。
それでも最低限の防備と撃退用の武装。
周辺探知の為のレーダーや各種機器。
そして空港も一応用意されている。
その空港から偵察のための航空機が飛び立とうとしていた。
中距離旅客機を改造した長距離偵察機は、空に飛び立つとそのまま目的地へと向かっていった。
高度を取り、搭載した機材を稼働させていく。
今回が初となる新勢力の撮影に、搭乗員達も多少の緊張をしている。
相手がどんな者達なのか、何を持っているのか。
それすらまだ分かっていない。
衛星からの撮影によれば、それ程高度な道具は持ってないと考えられてはいる。
なのだが、相手がどんな手段を持ってるのかはまだ分かってない。
何らかの手段を用いて撃墜される可能性もある。
そういった懸念があった。
正体不明の相手だからこそ、様々な可能性が捨てきれない。
こちらにない何らかの手段を用いてくるかもしれない。
だからこそ彼等は緊張を強いられていた。
それでも長距離偵察機は目的地を目指していく。
第二大陸の大穴。
異世界に繋がる巨大な隧道。
その周辺に作られた集落。
別世界からの来訪者達が作った拠点へと。
その様子を遠くから撮影をしていく。
搭載された機材は望遠機能などを用いて作られた拠点をとらえていく。
また、電波などが放出されてないかも検出していく。
幸いにもそうしたものは見あたらない。
これを知って搭乗員はある程度胸をなで下ろした。
レーダーなどを使ってないなら、こちらをとらえてはいないだろうと。
目視で見つかってる可能性はあるが、それでも攻撃してくる手段はもってないはずである。
地球基準で考えるならば。
それでもまだ確証が得られたわけではない。
ある程度は安全だろうと思えるだけで、危険が無くなったわけではない。
引き続き緊張しながら各種機器を使っての偵察活動を続けていく。
そうして相手の様子を伺っていた彼等であるが。
撮影した画像や各種機器の検出結果を見て色々と首をかしげる事になる。
相手の拠点の作りや検出結果がそれほど大したものに思えなかったからだ。
早合点はいけないとは思ったが、率直な感想はそういったものになる。
まず、拠点の規模そのものが思ったより小さい。
前線基地というよりは宿泊施設といった趣である。
地球側の基準からすれば粗末にすら見えるほどの。
何せ作られた拠点は木製の小屋といったものなのだ。
それも手作りの。
言ってしまえば、個人で行うキャンプのようなものだ。
アウトドアが趣味の者達が作るような即席の小屋のようなものである。
どちらかというとテントなどに近い。
そういったものが並んでいる。
一応、周囲を警戒してるのか、木組みの柵と堀が周囲を巡っている。
しかし、本格的な城壁などは作ってない。
そこまで作る技術がないのか余裕がないのか。
あるいは単に資材が足りないだけなのか。
そこはまだ何とも言えない。
しかし、全体の印象としては、大がかりなキャンプのように見えた。
ただ、それを行ってる者達の体格は驚くべきものだった。
衛星からの観測通り、相手は相当な大きさを持っている。
予測通りその身長は5~6メートルほどもある。
明らかに地球人とは違った存在だった。
ただ、大きさはともかく全体の姿形は地球人とほぼ同じ。
そんな見た目から彼等は、安直にこう呼ばれるようになる。
巨人と。