143回目 第二大陸開拓と開発
第三大陸の戦闘は一進一退を繰り返している。
そうしながらも確実に機械群の力をそぎ落としていった。
人類側に接してる地域の施設はほぼ壊滅状態。
それにより生産力を落とした敵は、回復力が目に見えて落ちてきてる。
そんな敵を穿ちながら進み、より内部に味方の軍勢は攻め込んでいる。
少しずつであるが、確実に軍配は人類側に上がりつつあった。
とはいえ、それを支えるのも大変である。
生産力の多くを戦場の物資の充当にあててるのだ。
余裕などあるわけがない。
増え続ける人口を支える為の増産も行われてはいるが、それもギリギリであった。
人口を支える農場を作るのも難しくなっている。
また、水路や堤防といったこれにまつわる施設などの建造もある。
これらを加えて考えると、既に無理がきてると言えた。
ただ、産業を支える為の人口もある程度は必要である。
今後の発展、ひいては生産体制の維持と増強を考えると、一次産業を始めとした各産業の確保も必要だ。
有利に進んではいるが、まだまだ余裕はなかった。
それでも数年の歳月をかけての戦争は、人類側に有利に運んでいた。
機械群の本拠地の半分近くは制圧している。
同じくらいの時間をかければ確実に根絶する事が出来ると見られている。
辛い状況もそれまでと考えられていた。
しかし異世界の状況はそれで終わりというわけではない。
新たに出現した勢力の動向にも注意しなくてはならない。
異世界のあちこちに出現したそれらが機械群と同じような行動をとらないかと。
気を休める暇もなかった。
それでも着実に増強されていく人類の文明圏は発展の土台を作っていた。
農場や採掘所なども増加し、それらを繋ぐ幹線道路も延伸している。
そういった場所を繋ぐ所には工業地帯も出来上がっている。
そして、人の住む場所もそれに合わせて拡散・拡大していた。
これらによって生み出された余裕は大穴を通って本国である日本への輸出もされている。
増大する人口を支えながら。
現在、人口1500万人を数える新地道は、無理を重ねながらも着実な進展をしていた。
それは第二大陸も例外ではない。
事実上、一井物産の自治領と化したこの大陸も成長を遂げている。
基点となる港はもとより、その周辺地域も姿を変えていっている。
河川には堤防が気付かれ、水害を減らしていっている。
大陸内にある鉱物資源の調査も進み、早い所では採掘も始まっている。
一井物産の系列・提携関係にある企業も続々と進出し、独自の経済圏も作りだそうとしている。
当然ながらそこから選出される地方議員も企業の息のかかった者達で固められている。
新地道そのものはともかく、その下にある市町村は既に一井物産の支配下にあると言えた。
もとより新地道に開拓や開発の委託を受けて自治領化してはいたが。
それを超えて、名実共に一井物産の支配地となりつつあった。
その為、第二大陸の政治も一井物産の意向にそう形で行われている。
それは税収のほとんどが開拓や開発にまわされると言っても良い。
問題がないわけではないが、そのおかげで開拓に全てが一本化されてはいた。
それくらいでなければ第二大陸の開拓を進めるのは難しいとも言える。
独裁的に主導権を握るくらいでなければ、開拓や開発など出来るものではない。
ましてほぼ独力での作業をする事になっていたのだ。
変な横槍や主導権争いに派閥争いが発生したら目も当てられない。
第三大陸での戦争もあるし、余計な事をしてる余裕はなかった。
なりふり構わぬ開拓事業は、おかげで成果を出していた。
人口120万人を抱えるこの大地は、企業城下町としての姿を生み出している。
そして、これらが一丸になってるからこそ、同じ大陸にいる別世界の勢力に臨める。
いまだ接触はないが、衛星からの観測結果と独自に行ってる調査・偵察活動は続いている。
衛星からの情報は新地道経由がほとんどであり、一井物産独自のものは少ない。
一応、GPSなどの商用・業務用の衛星は打ち上げてるが、まだ数は足りない。
だが、それらをもとにしての現地での調査は、間違いなく一井物産によるものである。
これらも余計な邪魔が入らぬからこそ実施されていた。
その調査や偵察もまだ途上である。
何はともあれ相手に接触、少なくとも観察が出来る所まで近づかねばならない。
なのだが、それもまだ達成出来てない。
相手のいる所まで大陸を横断せねばならず、その距離は数千キロを遙かに超える。
それだけの長大な距離を進む為の道作りがどうにかある程度目処がたってきたところだ。
途中の補給所も含め、様々な準備がようやく必要最低限は出来上がってきた。
ここまで来るのに数年がかかった。
あるいは、これだけの事をわずか数年で成し遂げたとみるべきか。
どちらが正しいかは分からないが、それでも何とか形がととのってきてはいた。
そして、その第一陣として、空からの航空偵察が行われようとしていた。