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142回目 あちらとこちらの片付けるべき問題

「これで第三大陸はどうにかなるな」

 一井物産の企画室でも戦況は把握していた。

「ある程度落ち着いたら、こっちの方に本腰を入れられる」

「まだ先だけどな」

 安堵と不安が入り交じった声が上がっていく。

「こっちに来てる連中が大人しくしててくれればいいけど」

 そう言いながら目にするのは、第二大陸に出て来た勢力。

 一井物産が実権を握る場所にあらわれた異世界の勢力である。



「あまり大きな動きは見せてないけど、この先どうなるか」

 新勢力は大穴付近に拠点を構えている。

 だが、それ程大きな活動はしていない。

「どうもそれ程多く来てるわけじゃないみたいだな」

「移動手段も無いみたいだし」

「自動車が無いのはありがたいけど」

 それ程文明は発展してないようだった。

 目立った移動手段が無い事からそれが察せられる。

 だが、油断は出来ない。

「ただ、あれだけの長さを移動はしてきたんだ。

 それだけの事が出来る何かはあるんだろう」

 長大な大穴、異世界を繋ぐ隧道。

 それを移動出来るだけの手段があるという事は、相応の何かがあるはずだ。

 それを持ってるというだけでも充分な脅威である。



「あと、大きさだよな」

「すぐには信じられないけど」

「でも、撮影結果は一致してるんだろ」

「だったら信じるしかないよな」

 彼等が懸念してる事はまだある。

「……どう考えても大きいって事か」

 あらわれた者達が、である。

 衛星から撮影された者達。

 周囲にあるものと比較したその大きさは、人類を超えるものだった。



 姿形は完全には分からない。

 上空から撮影したので、正面から見た画像がないからだ。

 ある程度の予想は出来るが、予想の域を出るものではない。

 しかし、この時点ではっきり分かるものもある。

 あらわれた者達の大きさがそれだった。

 どう考えても地球人より大きいのである。

 単純な周囲との比較によれば、おそらく身長は5~6メートルになるだろう。



 本当にそれだけ大きな体格をしてるのかはまだ分からない。

 正面から見たらもっと違った姿を見せるのかもしれない。

 しかし、現時点ではそうである可能性が高いと言える。

「俺達の常識には当てはまらんな」

 あらためてこの事を肝に銘じていく。



 異世界へと接続されるようになってから、こうした考えは常識になりつつあった。

 それまでの考えや枠組みにとらわれていてはいけない。

 異世界では今まで起こり得なかった事が起こるのだから。

 そもそもとして、この世界に存在するモンスターも人類の想像の埒外のものだった。

 それらを地球での常識に当てはめる事は出来ない。

 でないと対処を間違える。

 この世界ではこの世界の常識がある。

 それに合わせていくしかないのだ。



 固定観念というものが邪魔になってしまう。

 これまで通りの生活を保つ上では大事なものではある。

 だが、新たな事態に遭遇した場合、これが適切な対応の阻害になる。

 それが命取りになった事は、異世界開拓初期において数え切れないほど発生した。

 それらの必要の無かった犠牲を踏まえて、異世界においては素直さが求められる。

 何があっても決して否定しない、あるがままに受け止める。

 先入観を持たない。

 これが無いと最悪の事態に突入する事になる。



 目下の所、新たにあらわれた者達。

 その姿形や大きさなどがそれにあたる。

 人類よりも遙かに巨大な大きさをもつ存在というのも、現段階では否定するわけにはいかない。

 観測結果がそう示してるのならば、まず間違いなくそうなのだろう。

 あとは現地に出向いて確かめるしかない。



「でも、まだ先の話だな」

「第三大陸が落ち着くまではな」

「それまでは港の周りを整備するしかない」

「物資の消耗が激しいからな」

「そっちの方はどうなってんだ?」

「新しい工場が出来て稼働してるから何とかなるよ」

「ただ、基本的な場所の開発がな」

「新しく全部を作るのも時間がかかるか」

 現実に存在する様々な問題の対応を考えていかねばならない。

 第三大陸に送り込む物資の生産。

 それが出来る体制。

 その為に必要な社会基盤の確立。

 これが出来なければ同じ大陸にいる別勢力への対応など出来はしない。

 いるのは分かっているが、現時点で彼等が出来るのは自分の足下の整備だけだった。



 幸いなのは、相手がいる場所がまだかなり遠くである事。

 大陸一つがユーラシアと同じかそれ以上に広大な世界である。

 相手がこちらに向かってくるにしても、まだ大分時間がかかる。

 即座に接触がない、衝突もないのは今はありがたい。

 出来ればこちらに余裕が出るまで相手はのんびりしていてもらいたかった。

 さほど発展しないままで。

 そうでなければ、衝突になった場合の対処が面倒になる。

「相手が機械の連中よりも楽ならいいけど」

 そう望みたくもなる。

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おまえら、教えやがれ
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  ↓
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/479725667.html

『ピクシブのブースを使ってるので、その事を伝えておかねば』
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/477601321.html

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