138回目 間近で見る敵地 2
幸いな事に敵はあまり姿を見せなかった。
おかげでタクヤ達は、思ったより簡単に敵地に近づく事が出来た。
それでも可能な限り距離はとっている。
そこから望遠で敵地を撮影。
安全を確保しながら状態をおさめていった。
そんな敵地であるが、それなりの距離から見ると圧巻だった。
それなりの大きさを持つ機械群を大量に作り出してる工場だ。
一つ一つの建物が大きい。
それが無数に連なっている。
見える範囲だけでもそうとうなものだ。
そこに今後突入する事になるのだが、本当にこれを制圧・破壊出来るのかと不安になる。
少なくとも個人で携行出来る兵器でどうにかなるとは思えなかった。
無反動砲などを用いても上手く破壊出来るとは思えなかった。
最低でも機関砲。
出来れば戦車砲や長距離砲などでないと有効な打撃を与えられないのではと思えた。
「爆弾がないとどうしようもないな」
大量のプラスチック爆弾などを用いれば、どうにか破壊は出来るかもしれない。
しかし、それも内部の一部を破壊するに留まるだろう。
施設全部を崩壊させるとなると、どれ程の武器が必要になるのか。
想像するのも難しかった。
また、見てて気付いたのは、敵の動きである。
ほとんどが建物の間を動き、外に出て来る気配がない。
建物に出入りしたり、貼り付いたり。
内部でなんらかのやりとりがあるのだろう。
だが、それが何なのかまでは分からなかった。
ただ、比較的近くまで来てる(とはいえ何キロかは離れてる)タクヤ達に気を回してはいないようだ。
発見されてないのかもしれない。
そうであるならばありがたいが、この辺りは何とも言えない。
見つかってない事を願うしかない。
そもそもとして敵がどうやってこちらを認識してるのか?
人間のように目のような器官で姿をとらえてるのか。
あるいは熱源やレーダーなどで相手を探してるのか。
コウモリなどのように超音波を使ってるのか。
それとももっと別の手段を用いてるのか。
それすらもまだ完全に解明はされてない。
破壊した残骸を回収し、それをもとに研究は続けているが、めぼしい成果はあがってない。
だが、見つけてるにしろそうでないにしろ、敵が向かってこないのはありがたかった。
(そのまま無視しててくれ)
誰もがそう願っていた。
もし敵にその気があって向かってきたら、対処しようがない。
それ程までに建物の間をうごめく敵の数は多い。
攻勢でかなり多くを撃退し、勢力を大幅に削ったはずなのにも関わらず。
本拠地に残ってる敵はそれに見劣りしないほど多く見えた。
「あれを片付けるのかよ」
「出来ますかね?」
不安が口に出る。
押し寄せてきた敵を撃退はしたので、それなりに対抗は出来ると思う。
しかし、本拠地に押しかけたらどうなるかは分からない。
敵も本腰を入れて迎撃に出て来るだろうし、その時にはこの場にいる敵が全て動員されるかもしれない。
そうなった時に対処出来るかどうか。
「あそこにいるのが全部押し寄せたら、どうなるか分からねえな」
率直な感想である。
悲観したくはないが、楽観も出来ない。
「上がちゃんと考えてくれるといいけど」
そう思いながら撮影を続ける。
可能な限り視点を変えて様々な角度から。
そうやって集めた映像がどれ程役に立つかは分からない。
だが、与えられた仕事をこなすために、タクヤ達は課された作業を遂行していった。




