132回目 攻勢三回目 3
思った以上に敵の攻撃は激しい。
しかし、ギリギリのところで凌いではいる。
そんな状態が続いていた。
前線に展開する部隊は、持てるあらゆる手段で敵を撃退していく。
それでも敵は残骸を超えて突進をしてくる。
前回と同じように。
だが、前回以上の規模で。
それを凌ぐにあたり、新たに配備された砲戦車は大きな活躍をしていた。
簡略化された戦闘車両ではあるが、火力そのものは戦車と同等である。
敵を次々と撃破していく様は、味方にとってとても頼もしいものがあった。
正面しか攻撃が出来ないという欠点も、前方から敵が押し寄せて来るこの状況では問題にならない。
多少ならば砲口の向きを変えられるのもあって、敵を問題なく粉砕していく。
強いて欠点をあげれば、装弾数が20発と少なめな事。
自動装填装置に搭載出来る分しかない。
これは、内部容量が通常の戦車より少なくなってしまった事にも原因がある。
その分戦闘継続時間が短い。
このあたりはやむをえないものとして諦めるしかなかった。
その分、数を増やして隙を減らす事で対応するよう考えられていた。
そもそも、数を揃えて運用する事が前提の兵器である。
単独や少数での欠点は、あえて度外視して作られてる。
万能な究極兵器というわけではない。
欠点がある事を覚悟して用いられているのだ。
それでも短期間にそれなりの数を揃える事が出来たのは大きい。
おかげで戦線を支える火力として活躍していた。
もともと生産性を優先して作られたからだろう。
ありあわせの車体や砲などを用い、極力新規で作る部分を減らした結果である。
おかげで制作工程と費用が少ない量産向けの兵器に仕上がりつつあった。
まずは数を、という目的は充分にかなってる。
それは今回の戦闘において最も必要な要素だった。
性能はある程度は欲しい。
使えない程に能力が低くては意味がない。
しかし、数が揃わないのでは意味が無い。
特に戦争においてはあらゆるものが大量に消費される。
兵器は作ったそばから破壊されるようなものだ。
戦闘に使用するのだから当然である。
だからこそ、簡単に生産できる事が求められる。
どれ程高性能であっても、量産出来なければ意味がない。
少量で敵を食い止める、更には敵を撃退出来るならともかく。
そうでないならば、性能だけを求めても意味がない。
砲戦車はそういった性能と作りやすさの妥協の産物だった。
今回、広がってしまう戦線を補うのに役立っていた。
戦車では生産に時間がかかり、装甲車では火力が足りない。
その中間を上手く補っているのが砲戦車だった。
これが最善の兵器という事はなくても、あると便利なものなのは確かだった。
次々に敵を粉砕して言ってる姿がなによりの証明だろう。
その姿は前線にいる者達を勇気づけていく。
ほとんどの敵は戦車砲によって破壊してくれる。
正面以外の敵も、車体を左右に振って攻撃してくれる。
周りにいる者達はその残りを撃破すれば良いのだ。
これほど楽な事はない。
敵は多いが、砲戦車の攻撃があるならばどうにか凌げると思わせた。
後退を繰り返しはしてるが、敵の勢いも削っている。
人類側が後ろに下がる毎に、敵もまた次々と数を減らしていった。
事実上、両者は硬直状態に陥っている。
人類は後方の余裕を、機械群は数を減らしている。
そのどちらかが尽きた時が、勝敗の決まる時になる。