130回目 攻勢三回目
前回より間隔をあけて襲って来た敵の数は多い。
正確な数は分からないが、二倍から三倍はいると予想されている。
戦力の拡充につとめていたのは敵も同じである。
それに対抗出来るかどうか。
不安を懐きつつも、人類側は三回目の戦闘に突入していった。
初戦は展開した長距離砲による砲撃によって開始されていった。
射程範囲にとらえた長距離砲は、次々に榴弾を撃ち込んでいく。
引きつけられた敵は次々に砲弾を受けて粉砕されていく。
群れなす敵のあちこちに穴が空いていった。
その上を編隊を組んだ飛行機が飛んでいく。
軽飛行機を改造した1号と2号戦闘機だ。
それらは敵群に向かっていき、翼に設置した武器を駆使して上空からの攻撃を加えていった。
搭載された12.7ミリ機関銃が敵の群を薙いでいく。
隙間無く進んでくる敵はかなりの数がこれで貫かれていった。
また、一部の機体は試験的に搭載された武器を使っている。
翼に設置されたそれは、間仕切りのされた箱のような形をしている。
その中に逆さに吊された迫撃砲弾が懸架されていた。
それらを搭載した戦闘機は、敵の上空を通り過ぎながら、吊した砲弾を落としていった。
間隔を開けて落ちていく迫撃砲弾は、敵を巻き込んで爆発し、それなりの範囲の敵を巻き込んでいった。
搭載能力の低い軽飛行機改造の戦闘機では通常の爆弾を持たせるのは難しい。
それでも爆撃能力を持たせる為に考案された手段である。
効果はそれほど期待出来ないが、それでも面制圧を求めて試験的に導入された。
結果はある程度予想通りになっている。
同時に十数発を搭載していけるが、一発の威力が低いので成果はさほど期待出来ない。
だが、長距離砲でも届かない所も攻撃出来る。
機関銃による機銃掃射よりは効果はある。
迫撃砲弾を使うので、生産体制を新たに作る必要もない。
軽飛行機を使った攻撃方法としては悪くはないものだった。
ヘリコプターもこれに続く。
機関銃を搭載した簡易攻撃ヘリコプターも敵の群れに銃弾を浴びせていく。
航空機ほど遠出は出来ないこれらであるが、それでも砲弾の届かない場所で敵の数を減らしていく。
その様子をカメラにおさめ、状況を後方に報せながら。
敵は数を確実に減らしていく。
航空戦力が動員された今回は、前回以上にその速度と規模は大きくなっている。
それでも敵勢の多さはいかんともしがたく、敵の進撃を留める事は出来ない。
それはいつもの事ではあるが、今回は今まで以上の規模で襲ってきている。
さすがに前線を支えきれるかどうか不安が出てきていた。
前回以上に数の多い敵を削りきれるのか。
その不安がどうしてもつきまとう。
その不安が前線に到達する。
数は大分減らしているはずなのに、それでもまだ多い。
ところどころ穴の空いた列を形成しながら、敵は前線部隊に襲いかかっていく。
それを迎撃するように戦車砲が火を噴いていった。
前回と同様に敵を大量に巻き込んで砲弾が飛んでいく。
今回導入された砲戦車もこれに続く。
正面方向にしか攻撃が出来ないが、今はそれで充分である。
迫る敵を次々に撃破し、前線に余裕を作っていく。
急ごしらえな割にはそれなりの戦果を上げていった。
短期間である程度の戦力を揃えるという目的は充分に達成されてるだろう。
だが、敵の数はそれだけで押しとどめられるわけではない。
倒しても倒しても出て来るのだ。
弾薬が足りなくなる。
それは前回と同じだ。
しかし、今回は更に面倒な事が怒っている。
上空から戦場を眺めている者達にはそれが嫌でも目についた。
「側面にまわってる────」
進撃してくる敵が横に広がっているのだ。
前回にはなかった動きである。
それが前線を左右からくるみ、側面からの攻撃を仕掛けようとしている。
その場にいた部隊が対応して応戦を始めるが、戦力がどうしても足りない。
正面からやってくる敵をおさえるので手がいっぱいなのだ。
やむなく、当初の予定よりも早く後退していく事になる。
「もう少し粘りたかったが」
「さすがに難しいですね」
その場に居合わせた指揮官達は、そう言って後退を指示していく。
現有兵力で敵を留める事が出来ないのだ。
下がって味方と合流し、より強固な陣を組むしかない。
「支援砲撃を要請しろ」
後退までの時間を稼ぐ為の指示が出される。
それに呼応して長距離砲が攻撃を開始する。
戦闘機やヘリによる攻撃も加わり、敵の進撃が幾分ゆるんだ。
それを見て最前線部隊は後方へと撤退をしていった。