13回目 別大陸開発に至る理由
タクヤ達が別大陸で四苦八苦してる頃。
新地道にある一井物産の企画部においても、タクヤ達と同様に苦労をしていた。
タクヤ達のように戦闘による疲弊は無い。
だが、今後の事を考えて脳漿をしぼる辛さがある。
企画部の者達にのしかかる仕事の重さがそうさせていた。
「大陸の開拓開発は……まあまあか」
「とりあえず、今の所は計画通りだ」
「これから先が大変だけど」
彼等が任されている最優先の業務、別大陸の開拓。
それに必要な様々な作業を、彼等は発案していた。
全てを自由に出来るが、全ての責任が押し寄せてくる。
極めて重大な業務に、居並ぶ一人一人が緊張を強いられていた。
実際、企画部の業務はとてつもなく重い。
命じられてる開拓の為に、あらゆる権限が渡されてはいる。
全ては業務遂行の為だ。
なのだが、それをもってしても、開拓の難しさは変わらない。
いくら最優先される業務とはいえ、他の業務を侵害するわけにはいかないからだ。
既存の業務や事業が利益をもたらし、その利益が新たな事業を支えている。
その為、自由にやれるといっても限界が発生する。
それでも、他の部署などよりは優先的に資金や資材などはまわされる。
優遇されてる事には変わりはない。
しかし、どれ程優遇されてるとはいえ、それをもってしても開拓は難しい業務だ。
別大陸でというのがそれに拍車をかける。
輸送の為に船を用意せねばならないし、その為の護衛も必要だ
簡単に行き来できないというだけでかなり難しくなってしまう。
造船所の不足も深刻な問題であった。
開拓開始以来、同じ大陸の中だけを切り開いてきたのだ。
船舶が必要な場面はそれほど多くはない。
それでも一応、多少は輸送船も造られてはいた。
大量の物資輸送においては、船の有用性が大きかったからである。
しかしそれも、あくまで沿岸を進むだけのものがほとんどだった。
沿岸を進み、主要な港を結ぶだけで充分であった。
その為、外洋航海用の船など造る事はなかった。
そして、そんな船を造れる程大きな造船所は、まだ存在しない。
目下、突貫作業で建造が進んでいる最中である。
いずれは外洋航海用の大きな船も造られる見通しではある。
だが、それも数年先の話ではあった。
既存の造船所の数も足りない。
現状での造船能力では、新たに発注しても数年先に入手する事になる。
既に造船能力は限界に到達しているのだ。
新たに追加で船を建造する余裕など無い。
これもあって、更なる造船所の拡充が必要になった。
どうせ今後も他の大陸との行き来は必要になる。
その為の投資として、造船能力の確保は急務であった。
同時に、外洋航海が可能な護衛艦艇の増加も求められた。
モンスターは海にも存在する。
それこそ、全長数十メートルを超える巨大なものが。
沿岸輸送においても襲ってくる海洋モンスターが、別大陸への移動中に襲ってこないわけがない。
それらに対処するために、武装艦艇も用意せねばならない。
それも外洋航海が可能なものを。
今までの護衛艦艇は、沿岸を行き来するだけでいいので、比較的小さなものが多かった。
航続力なども比較的短くて良いので、それらもさほど考慮はされていない。
なので、既存の艦艇を護衛に用いるのは無理だった。
ここでも、新たな艦艇が必要になってしまう。
船舶だけでもこの有様だ。
他に必要なものを揃えるだけでも相当な問題が生まれる。
そもそも、何もない所に接岸するのだ。
どうやって上陸すればいいのか、という話になる。
その為の浮き桟橋なども用意して持ち込まねばならない。
必然的に、持っていく物資は増大していく。
それらを用意して設置して、物資を陸揚げしていって。
それからようやく開拓作業に入れる。
海を移動するだけでこれだけの手間がかかってしまうのだ。
これらを一つ一つ片付けねばならない企画部の苦労たるや、推して知るべし。
優先的にまわしてもらえるとはいえ、資金も資本も資源も限りがある。
それらを有効活用し、なおかつ時間をかけずに事を進めねばならない。
何をどの順番で進めるのかを考えて、企画部は連日連夜頭を悩ましていた。
それらも、今はある程度落ち着いてはいる。