129回目 得る事が出来た時間で為しえたもの 2
陸上戦力の方も増員されており、以前よりも戦力は増大している。
戦車も新規に生産された分が送り込まれてきている。
それでも数は10輌増加しただけで、まだまだ厳しい状況だった。
しかし、それ以外にも投入されたものがある。
一井物産などが開発していた砲戦車だ。
これの試作型が持ち込まれている。
この砲戦車、戦車としてみたら性能は低い。
搭載してる砲はほぼ固定で設置されてるので攻撃できるのは前方だけ。
元が装甲車だから装甲も薄い。
機動力も装甲車と同程度。
時間がないので、照準装置や暗視装置などもありあわせを詰め込んだだけ。
純然たる戦闘力で言ったら、決して褒められたものではない。
一応、砲口は左右や上下にある程度動かせるようにはなってる。
自動装填装置もついてるので、次弾発射までの時間も短い。
また、前方以外の砲口に対処するために、補助的に12.7ミリ機関銃も搭載されている。
砲塔も固定ではあるが一応は設置されている。
なのだが、全体のバランスが悪いという印象は否めない。
あくまで攻撃力のみに全てを割り振ったような存在である。
だが、現状ではこれで充分ではあった。
攻撃力だけならば3号戦車と同等なのだ。
その砲撃力が増えたのは良いことではある。
また、急造ではあるが、短期間である程度数を揃えられたのも大きい。
とりあえず数が必要な状況ではありがたい。
急ごしらえでどこかに不備はあるにしてもだ。
その洗い出しすら満足に終わって無いが、それでも生産速度の早さは着目するに値した。
ありあわせの物で作ったのが幸いしたのだろう。
戦車砲も車体も、基本的には既存のものの流用だ。
このため、新規で生産設備を作る必要がない。
新規に作らねばならない部品もそれほど多くはない。
短期間で開発をして試作まで持ち込めたのはこれらの為だろう。
逆に言えば、短い開発期間で形にするにはこれしか方法が無かった。
だが、それは今の所良い結果に終わってはいた。
一応動くだけ。
一応砲撃も出来るだけ。
その程度の代物ではある。
しかし、何よりも必要な数を揃える事が出来るかもしれない。
この可能性が今の新地道には必要なものだった。
そして、この砲戦車がどれだけ使い物になるのか。
もしくは、どれ程役立たずなのか。
それはこれから始まるであろう戦闘で確かめていく事になる。
これが最悪の結果にならないよう、誰もが願っていた。
この他にも大小様々な物が導入されている。
一応試験は合格したものから、ろくに検査すらされてないものまであらゆるものが。
そのどれもが戦局を少しでも有利にするために作られたものである。
どれ程効果があるか分からないままに。
それでももしかしたら役立つかもしれないと思い持ち込まれたものである。
そんな準備を可能な限り前倒しで進めていった。
これらが結果に繋がるよう願いながら。
それが通じるかどうかは分からない。
しかし、来るべき時は容赦なく到来する。
前回の攻勢から五ヶ月後。
機械群は前進を始めた。