123回目 下々からしてみれば 2
ボーナスはそれ程でもなく、休暇もさほどではなかった。
特に休暇は、順繰りの交代で結構後回しにもされた。
無いよりは良いのだが、それでももう少し色を付けてもらいたかった。
しかも、休暇あけにすぐに放り込まれた仕事は、やはり最前線送り。
戦闘が主な仕事ではないが、宛がわれた場所の警備を担当させられる事になる。
それを聞いてタクヤはまたも貧乏くじが回ってきたのを感じた。
送り込まれるのは最前線。
そこから更に敵地に向かっていく為の道を造ってる箇所である。
そんな所での警備といったら、周辺のモンスター退治と襲ってくる機械群の排除。
これしかない。
しかも、宿泊施設などもろくにととのってない場所である。
色々な意味できつい仕事になる。
それが分かってるだけに、タクヤ達はため息を何度も吐き出した。
こんな仕事を回してくる会社への怨嗟も忘れない。
それでも業務に従事する勤労精神が出て来るあたり、タクヤ達も日本人なのだろう。
今や懐かしきジャパニーズ・サラリーマンという響きがぴったりである。
それが良いのか悪いのかは判断しかねるところではある。
ただ、状況はかなり悪くなっていた。
敵の攻勢の規模、そして数の増大速度。
それらから考えるに、次の攻勢は二ヶ月から三ヶ月後と予想されている。
それまでに少しでも前進し、敵との距離を縮めねばならない。
相手の領域に入り、生産設備を破壊せねばならないからだ。
その為には距離を縮めるしかない。
確実に前進して、敵地に迫る必要がある。
現在、第三大陸における様々な仕事は、この為に行ってると言って良い。
幸いなのは、モンスターがそれほど出て来なくなってる事。
そして、機械群がなりを潜めてること。
これらのおかげで護衛の仕事はかなり楽なものになっていた。
モンスターは近づくのが危険と分かって来たからではないかといわれている。
そして、機械群の方がもっと剣呑な理由による。
観測衛星からは増産を続ける敵の姿が確認されているのだ。
それらは勢力圏内から動き出す様子はなく、ひたすら数を蓄えてるという。
おそらく、次の攻勢に備えてるのだろうと考えられていた。
また、輸送機を用いた爆撃を警戒してか、その範囲外に新たな工場を建設してるという。
それらが完成したら、今まで以上の数が繰り出される可能性があった。
同時に、爆撃されてる地域の工場再建はさほど進んではいなかった。
直してもすぐに壊されるのを学習したのではないかと言われている。
実際、どこまで考える能力があるのか分からないが、その可能性は否定出来なかった。
それでも、輸送機の行動範囲にある施設だけでも完全に破壊しておいた方が良い。
まだまだ残ってる施設も多く、爆撃の必要性がなくなったわけではなかった。
そんなわけで、人類も機械群も大人しくしている。
直接的なぶつかりあいはなく、比較的平穏な日々が続いていく。
なのだが、それは決して平和になったというわけではない。
次の戦闘に向けて双方準備を進め、その時が来るのを待っているだけだった。
それは戦闘をしてないというだけであり、平和という言葉が持つ意味からはかけ離れている。
何時来るか分からない争いに怯える毎日を平和とは言わないだろう。
それは戦争準備と言うべき状態である。
緊張を強いられるこんな日々が、ただただ続いていった。