122回目 下々からしてみれば
「終わったな」
拍子抜けしたような声を出す。
そんなタクヤの言葉に他の者も同様の言葉を出していく。
「簡単に終わりましたね」
「前よりは楽だったな」
「あんまり敵が来なかったっていうか」
誰もが意外に思っていた。
それくらい、前回と今回とでは落差が激しかった。
爆撃に戦車の投入。
これらによる成果のおかげで、タクヤ達の負担はかなり下がっていた。
交代で持ち場を離れる事も出来たし、戦闘中でも少し息を吐くくらいは出来た。
大変な事は変わらないのだが、それでも前回よりは随分と楽だった。
「次はもっと楽になるといいけど」
心の底からそう思いながら、どうせやってくるだろう次に思いをはせた。
たいそううんざりしながら。
「この先どうなるんすかね」
常にどこかで漏れてくる疑問。
それがこの時も出て来た。
そう言った部下も、それを聞いたタクヤを含めた他の者も同じ思いだった。
今回は上手くいった。
次も上手くいって欲しい。
でも、そうならなかったらどうなるのか?
期待と不安が入り混じる。
むしろ不安しかなかった。
だからそれを払拭したくて、期待を抱いてしまう。
全体の様子が見えない下々としては、どうしても見えない範囲が不安になる。
気にしたって仕方ない、とは言えない。
それが自分達にとってどうしようもない事でも、最低限知っておきたい事はある。
いずれ何らかの形で自分達に降りかかってくるのだから。
自分に手出し出来ないような大きな問題であるとしても、それを無視するわけにはいかなかった。
ただ、知りようがない事にあれこれ悩んでも仕方ないのも事実である。
分からない事については手の出しようがない。
解決能力の有無の問題ではない。
知りようがないし、目の前に無いから何も出来ないのだ。
関わる事が出来ない部分というのは、どうしても発生する。
それについては、担当してる者達に任せるしかない。
「何とかしてくれるだろうよ」
タクヤとしてはそう言うしかない。
「誰がですか?」
「誰かがだよ」
タクヤが知る由もない事である。
だけど、そういう者が何かをしてくれるだろう。
それを信じるしかない。
「とりあえず、俺達よりずーっと偉い誰かさんが、何とかしてくれるんじゃねえの?」
そうであって欲しかった。
そうして欲しかった。
自分達より権限も責任も持ってる者達が、この状況をよりよい方向に進めてもらいたかった。
他力本願であるが、こればかりはどうしようもない。
自力でどうにかなるような事ではないのだから。
「とりあえずだ」
何よりも今必要なのは、そういう事ではない。
「休暇がちゃんともらえればそれでいいよ。
あと、ボーナスも」
そう言ってタクヤは大きく息を吐いた。
「それもそうだな」
「今回はどれだけくれるんだろうね」
「どうせ雀の涙だろ」
ぼやき声があがっていく。
悲しい事に、これらはあながち間違ったものではなかった。