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121回目 余裕で敵をしのぎはしたけども

「どうにか終わったな」

 様々な方面からの情報で敵の攻勢を退けた事が確定する。

 前回に続き、今回も勝利に終わらせる事が出来た。

 一井物産企画室はその事に安堵をしていた。

 それでも楽天的にはなれないのがここにいる者達だ。

「でも、今回もまた問題が見えてきたな」

「そうだな」

 勝つには勝ったし、前回よりも良い状態で終わらせる事は出来た。

 だけど問題が皆無という事は無い。

 実際、彼等は色々と問題点を見いだしていた。



「敵を押し返すほどの戦力がない。

 これは確かだな」

 もうこれは確定事項と言えた。

 確かに戦車は一度に大量の敵を撃破した。

 しかし、それが敵を押し返した事は無い。

 あくまで迫って来る敵を撃破しただけだ。

「弾が切れたら撤退するしかない。

 戦車の数がもっとあれば話は別だろうけど」

「数が少ないから、一輌あたりの負担が大きいんだろうな。

 弾切れになっても交代する事が出来ない」

 もし、もっと数があれば、弾切れになっても別の者と交代する事が出来たかもしれない。

 それらが戦闘をしてる間に補給をして再び戦闘に戻れたかもしれない。

 しかし、それが出来なかった。

 そうするだけの数がないのだ。



「それが出来たとしても、敵を追撃するのもな」

「後ろから物資を運ばなくちゃならんからな。

 それが出来るだけの輸送力が無い」

「道もないしな」

 このあたりも問題だった。

 仮に敵を押し返したとしても、そんな敵を追撃していけるかどうか。

 敵の隊列に切り込み、先に進んでいくのも難しい。

 そうなると、物資も同時に送り込まねばならなくなる。

 だが、それが出来るだけの輸送力がおぼつかない。

 道路もないので車輌の運搬能力も大幅に落ちる。

 どこかに窪みがあったら目も当てられない。

 相手を蹴散らして進むだけでは済まないのが難しい。



 だからこそ、幾重にも張り巡らせた防衛線に物資を備蓄した。

 敵の攻撃に備え、事前に物資を集めておいた。

 そこに集めた物資を使って補給を行い、無くなれば交代して次の防衛線で補給を行う。

 こうした後退戦法で敵を撃破するしかなかった。

 運搬能力がないのだから、あらかじめ集積しておくしかない。

 これは上手くいったのだが、言い換えればこれしか方法がなかった。

 少なくとも人類側はこれ以上の良策を思いつかなかった。



 この戦法の問題は、後退できるだけの距離が必要になること。

 それだけの余裕が必要だった。

 こればかりはさすがに作り出す事は出来ない。

 幸い、今の所は前線と港などの主要部分の間にはかなりの距離がある。

 最悪の場合、ここまで後退すれば良いとは言える。

 だが、さすがにそれは最後の手段にしたかった。

 それよりは、出来るだけ敵地に攻め入り、可能な限り後退をしないで済ませたい。

 なるべく遠くで敵を迎撃するのが理想だった。

 その分だけ自分達の受ける損害が減る。



「でも、それも問題だけど」

「こっちの方が深刻だな」

「物資の消耗が大きい」

 結局ここに問題は行き着く。

 今回消費された物資は前回よりも多い。

 前回より投入されてる部隊が多い。

 それに戦車などの整備に負担がかかるものが投入されている。

 これらを維持・運用する為だけに前回以上の負担がかかっている。

「必要なんだけど」

「これだけ出費が激しいとな」

「迂闊に使えないぞ」

 強力な兵器を使う為にどれだけの努力が必要なのかを思い知らされる。

 それでもこれを支えていかねばならない。

 今回、戦車がいたから敵を簡単に撃退できたのだ。

 使うのが大変だからと退けるわけにはいかない。



「あとはこれからだな」

「攻め込むしかないだろ」

 結論は出てる。

 それをどうやって行うかである。

「とにかくもっと進んだ所に空港を移さないと。

 今のままだと距離がありすぎる」

 それも問題だった。

 戦略爆撃の効果ははっきりしている。

 しかし、敵ととの距離がありすぎるので、それが問題となってしまっている。

 一回往復するだけで半日は時間がとられてしまう。

 搭乗員の負担も大きいし、一日に爆撃出来る回数も少なくなってしまう。

 これを解消するには、更に敵地に近づく必要があった。



「それと、戦車はもっと必要だ。

 すぐに増産は出来ないだろうけど、必要な物資は揃えてもらおう」

 このあたりは自治体の管轄である。

 一企業ではどうにもならない。

 だが、要望として伝える事は出来る。

 それくらいしか出来ないが、やらないよりは良い。

「現場の連中にも一筆書いてもらうか」

 届ける声は少しでも多い方が良い。

 戦闘に参加した者達がこぞって要望を出せば、多少は何らかの動きが出て来るかもしれなかった。

「ネットにも色々書き込みさせるか?」

「当然だ」

 直接自治体に届くわけではないが、市井に前線の様子を伝える事は間接的な圧力になりえる。

 そこまで大きな声になるかどうかは分からないが、やらないよりは良いだろう。



「あと、うちの戦力拡充もやっぱり必要だな」

 これもはっきりと分かった事だった。

 敵を撃破出来るだけの砲撃力。

 それがあるのと無いのとでは大きな違いが出て来る。

 その事を今回の出来事ははっきりと示してくれた。

「戦車で敵があれだけ飛び散るとはな」

 その様子をおさめた動画を見た時、彼等は本当に驚いた。

 そして、この難局を乗り切るためにも揃えておかねばと確信するに至った。

 一井物産の今後の展開の為にも。

「となると、駆逐戦車を?」

「作った方がいいだろうな」

 威力ははっきりしている。

 ならば否定する理由はない。

「もう開発も始まってるんだし」

 まだ設計図の段階だが既に話は進んでいる。

「出来るだけ早く出来るといいんだが」

「開発の連中に頑張ってもらうしかないよ、これは」



 この日も話は続いていく。

 一つの問題が終わってもすぐに別の問題がやってくるのだ。

 終わる気配を見せないまま、様々な事が検討されていった。

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おまえら、教えやがれ
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http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/479725667.html

『ピクシブのブースを使ってるので、その事を伝えておかねば』
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/477601321.html

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