119回目 第二回大攻勢 6
投入された戦車の威力。
空から敵地への爆撃。
この組み合わせがもたらす効果は凄まじく大きなものになっていた。
戦車によって前進は遮られ、補充すべき兵力の生産もままならない。
おかげで敵の戦列は前回よりも早く短くなっていった。
後続がほとんど存在しないのだ。
全く無いわけではないが、前回に比べれば少ない。
観測衛星の画像によれば、破壊された工場に兵力の幾らかが回されてるからのようだった。
目論見は上手くいったようで、敵は確実に数を減らしている。
その事が伝えられた後方の陣地では誰も安心をおぼえていた。
敵はやがてやってくるし、来れば戦うしかない。
しかし、それでも前回よりは楽だろうという予想が上がっていた。
「凄えよな」
それがまず出て来た。
「こんなに撃破するもんなのか」
「戦車って凄いんだな」
そんな評価も上がっていく。
それは戦車の必要性を再認識したという事でもある。
実際、敵の猛攻を知る者達からすれば、これほどありがたい存在はない。
前回は何とか撃退したが、それでもかなりギリギリの戦いではあった。
それを知る者達からすると、接近するや敵をまとめて粉砕する戦車は頼もしいものだった。
着弾地点を中心に敵をまとめて撃破する長距離砲と並んで。
おかげで敵は次々に倒れ、その数を減らしてるのだ。
対応する者達の負担はそれだけ減る。
特に比較的軽装備の企業部隊などにとって、これは本当にありがたいものだった。
歩兵銃が中心の彼等にとって、接近してくる機械群は恐怖でしかない。
手持ちの武器で撃退出来るとはいえ、大量に押し寄せる敵の全てを撃破するのは難しい。
それが次々に撃破されてるのだから、これほどありがたい事はなかった。
「これなら俺達いらないんじゃないか?」
そんな希望すら出てくる。
さすがに冗談で言ってる事だが、そう思わせる程に大きな戦果だった。
最終防衛線を中心に展開してる企業部隊の者達は、自分の所に来る前に敵が壊滅するよう願っていた。
残念ながら現実はそこまで優しくはなく、敵は結構な数を残して迫って来る。
死にものぐるいで対応せねばならないだろう。
だが、敵の数が減ってるのも確かで少しは余裕がある。
その分だけ自分達の負担が減り、生き残る可能性が高くなってるのは誰もが感じていた。
「それじゃあ、がんばりますか」
そう言ってタクヤは同じ陣地にいる配下に声をかけていく。
彼等のいる陣地は後退してきた戦車と合流を果たした。
直に敵が迫るだろう。
それに備えて彼等もやれる事をやる事になる。
「迫撃砲の砲弾は?」
「こっちにあります」
「機関銃の銃身と弾薬は?」
「揃ってます」
「敵の位置は?」
「掴んでます。
あとちょっとですね」
「銃の整備はしてあるな?」
「もちろんです」
「逃げ出す段取りは?」
「もちろん出来てます」
最終確認に良好の返事が上がってくる。
「それじゃあ、仕事にかかろうか」
そう言って全員敵の来る方向に目を向けた。
まだ姿は見えないが、いずれやってくる敵に向けて。
程なくタクヤ達は敵との戦闘を開始していった。
銃撃や砲撃の音が重なり凄まじい轟音を鳴り響かせる。
その音と共に敵が砕かれ、残骸が道に転がり出した。
最終防衛線の直前あたりに展開する彼等は、敵をほぼ確実に食い止めていった。




