118回目 第二回大攻勢 5
迫る敵の大群にどのように対応するか。
その策を決める中で、輸送機からの爆撃も見当された。
上空からの攻撃に有効な防御手段を敵は持ってない。
ならば空から爆弾を落とせば敵をかなり殲滅出来る。
戦場においては、これほどありがたい支援もない。
しかも、砲撃が届かない遠距離を攻撃する事が出来るのだ。
事前に数を減らすという意味において、航空攻撃はこれ以上なく有効な手段となる。
だが、これは結局否定される事となった。
確かに目先の敵が減るのはありがたい。
空からの攻撃もあれば戦闘は有利に進むだろう。
しかし、それでは敵地から続々と次の敵がやってきてしまう。
それでは意味が無い。
倒しても新しく敵が作られてしまうなら意味が無い。
それよりも敵を生産してる場所を破壊する方が効果的である。
敵の補充を困難にし、前線にかかる圧力が減る事になる。
また、工場などが破壊されれば、そちらの回復に兵力を割く事にもなる。
結果として前線に送り込まれる敵兵力が減る。
目前の敵を退ける事は出来ないが、戦争そのものは短期間で終わる可能性が高くなる。
こう結論づけた司令部は、戦略爆撃の続行を決定した。
それに従い、爆弾を搭載した輸送機は敵地へと向かっていく。
遮るもののない大空を飛ぶ彼等は、既に慣れた航路をとって敵地へと向かう。
相変わらず敵は空からの攻撃に対抗する手段がない。
おかげで敵地に向かうにも関わらず危険がない。
最も警戒すべきは空を飛ぶモンスターだけという状態が続いている。
それでも護衛が無いというのは危険である。
どこでどのようなものが襲ってくるか分からないのだから。
輸送機の搭乗員達は常にこの危険と隣合わせだった。
もし、敵が空を飛ぶ機械を作り上げたら?
もし敵が高空に届く射撃武器を作り出したら?
その時、安全はあっさりと消え去る。
何より怖いのは、敵がいつこれらを持ち出すか分からない事。
まだ持ってないのかもしれない。
既に手に入れてるのかもしれない。
その可能性が搭乗員達に不安を懐かせる。
もしかしたら、それがあらわれるのが今日かもしれないのだから。
それでも彼等は、今の所は大丈夫だったという体験だけを信じて空を飛ぶ。
しなければならない仕事があるからだ。
そんな彼等の不安は今日もとりあえずは発生しなかった。
眼下にひろがる金属製の建物が見えてくる。
それらを確かめると、高度を下げて爆撃に入っていく。
まだ爆撃してない施設を狙い、機体後方の扉を開いていく。
攻撃位置に到達したところでそこから爆弾を放り出していく。
それらはいつも通りに落下し、いつも通りに施設へと飛び込んでいく。
数発の爆弾はそれで敵施設の稼働を停止させる。
それを確認する事無く輸送機は次の目標へと向かっていく。
搭載してきた爆弾全てを吐き出すまで。
この攻撃の影響ははっきりとは分からない。
しかし、敵の活動を確かに停滞させていく。
それは長い目で見れば大きな成果となってあらわれる。
今はまだ目に見えてこないだけで。
確実に言える事は、今回も爆撃は成功したという事。
輸送機も無事に役目を終え、帰投をしていく。
これだけが確定した事実であった。




