117回目 第二回大攻勢 4
迫撃砲の支援攻撃もあり、敵の侵攻は頓挫していく。
進軍速度よりも砲撃による破壊力が上回った結果だ。
このため、一度敵が接近するまで待機する事もあるほどだ。
しかし、この攻撃も長くは続かない。
攻撃が続けば砲弾も切れる。
当たり前の事が当たり前に起こっていく。
攻撃を続ける戦車隊はすぐに砲弾切れに近い状態に陥っていく。
その砲弾が各車残り10発にさしかかったところで、次の指示が飛んだ。
『各車、後退開始。
次の陣地まで移動開始』
その無線を聞いて、戦車と装甲車が移動を開始していく。
既に当面の目標は達成した。
長居は無用である。
ある程度数を減らしたところで、彼等の役目は一旦終わりを迎えた。
装甲車と戦車が順番通りに移動を開始していく。
最初から後方に車体を向けていた各車は滑らかに動いていった。
攻撃の際には、砲塔を後ろに向けていたのだ。
敵の攻撃に備える必要がないので、比較的装甲の薄い後方を敵に向けていられた。
射程距離が短い敵のおかげで、接近するまで防御を気にしなくてよい。
そして、接近するならさっさと逃げ出せば良い。
その為の後退である。
何もこの場を死守する必要は無い。
ある程度逃げて、次の陣地に移動し、攻撃を引き継ぐ。
それだけで良いのだ。
今回も陣地を幾つも構えた多重構造の防衛をもって敵に当たっている。
第一陣で敵の数を減らし、接近してきた所で次の陣地に移動。
そこで味方と合流し、敵の足止めをしてもらう。
その間に弾薬や燃料の補給を行い、戦闘に参加する。
この繰り返しで敵を削っていく。
前回とやってる事は同じだった。
それでも充分な効果があるのは、敵が前回と同じような手段で攻撃を仕掛けてるからだ。
もし多少なりとも違った手段をとってきたら、対応は難しくなったかもしれない。
横に幅広く展開し、一斉に襲いかかってきたらさすがに対応しきれなかっただろう。
軍が参加してるとはいえ、それでも人類側の展開兵力は少ない。
敵に比べれば圧倒的に。
それが一列になって突進してくるから逆にどうにか対応出来ている。
そうでなければ、広がった戦線に対応出来ず、無傷で突破する敵も出ていただろう。
それらを処理するだけの余力は、人類側には無い。
だが、敵はそれに気づかないのか、はたまた何らかの考えがあるのか。
前回と同じように長大な列を作って一点突破を計るかのうように突進してくる。
正直、これほどありがたい事はなかった。
そんな戦闘が繰り広げられてる地上を下に、敵地に向かって飛ぶ機影がある。
敵地攻撃を続けている輸送機である。
それらは押し寄せる敵をあえて無視して敵地へと向かっていく。
今日もいつものように生産施設や設備を破壊するために。




