115回目 第二回大攻勢 2
後方で様々な愚痴や期待の対象にされる軍。
それに応えるわけではないが、彼等は自分らの仕事に専心していた。
最も危険な最前線に展開し、その時が来るのを待つ。
不安がないわけではないが、それ以上にようやく与えられた出番に重圧を感じていた。
不快なわけではない。
やらねばならない責任感はあるが、それは自分達の存在意義を確認させてもくれる。
万が一に備えて配備されてはいたが、出番がないまま時を過ごしていた彼等にとって、これはようやく巡り会えた大一番である。
逃げも隠れもせず、相手になる敵を待つつもりだった。
横一列に布陣する戦車、およそ20輌。
新地道にて開発された3号戦車である。
その間に補助の為の装甲戦闘車が入っている。
その車列がやがて来るであろう敵に向かっている。
同じ方向を向いた105ミリ砲と35ミリ機関砲が火を噴くその瞬間を待っている。
敵の位置は逐次報告が入ってくる。
それこそ、現在地を衛星や偵察で飛ばした無人偵察機がとらえている。
それらがもたらす映像が敵の現在地をしっかり伝えてくれていた。
また、側面を突かれないように、偵察隊の者達が周辺に展開している。
敵の姿が見えれば、即座に通報が入るようになっていた。
なので、常に警戒してる必要は無い。
緊張感は高まるが、それでも戦車の車内は意外と平静をたもっていた。
あるいは、保とうとしていた。
そんな彼等の前に望まぬ来客が押し寄せてくる。
前回の攻勢ではげ上がった地表に浮かんだ敵。
それらが大地を埋めるようにひろがっていく。
それを前にして、戦車が停止していた活動を開始していく。
エンジンが動きだし、全ての機能が起動していく。
全車輌が問題無く稼働し、敵に備えていく。
それらが交戦に入る前の前段階。
後方から支援砲撃が入る。
自走化された迫撃砲による一斉攻撃だ。
それらが迫る敵に次々と遠距離攻撃を仕掛けていく。
特別狙いを付けたわけでもない攻撃だが、隙間を空けずに並んでくる敵には充分な効果を出す。
それこそ砲弾が直撃する事も珍しくない。
直撃せずに地表に落ちても、爆風と共に飛び散る破片が敵の底部を破壊していく。
前回と同様、それによりホバー走行していた敵は行動不能になっていく。
そうやって足止めを食らった敵が幾つも出てきた事で、戦車の前に出てきた敵は幾分減っていく。
敵の隊列の所々に穴が発生し、その後ろに続く者達の動きを幾分止めた。
それでも絶対数では機械群の方が圧倒的に多い。
倒すにいたらなかった敵は、それこそ損害を気にせず突進していく。
このあたり、感情がない(と思われる)機械だからこそだろう。
人間だったら、立ちすくむ者などがどうしても出て来る。
それがないというのは、ある意味強さである。
それらを迎える戦車隊は、自分達に突進してくる敵に砲口を向ける。
攻撃の指示はまだかまだかと誰もが思った。
その指示が出たのは、敵の最前列が1000メートルまで接近した時だった。
『攻撃開始!』
戦車隊の隊長から指示が下る。
それを聞いた各戦車が攻撃を開始していく。
轟音を発する戦車砲が迫る敵に砲弾を放っていった。