113回目 戦略爆撃 3
爆撃の効果はさほど大きくはなさそうだった。
一度の爆撃で10カ所以上の施設を攻撃は出来る。
上手くいけば、最大で20カ所に損害を与える事も出来る。
しかし、当初予想していた通り敵の大きさに比べれば微々たる損害でもある。
やらないよりは良いが、大きな痛手を与える程では無い。
爆撃が成功して施設が破壊されても、周囲にいる機械によってすぐに修復が始まるからだ。
おかげで、破壊しても稼働施設が減るという事態にまでは至ってない。
なのだが、効果が全く無いかというとそうでもない。
一時的にでも施設が破壊されれば、そこで行われていた生産活動が止まる。
止まった分だけ、新たな生産がなされる事はない。
再稼働するまでは生産が止まる。
また、修復のために機械も施設にかかりっきりになる。
その分だけ外に出て来る敵の数が減る。
それは小さな事であったかもしれないが、効果は確かに出ていた。
そうした小さな効果の積み重ねは馬鹿に出来ないものがある。
時間が経つにつれてそれははっきりとしてきた。
敵の機械の生産速度が落ちてきたのだ。
今までの拡大速度でいけば、さほど時間を置かずに攻勢の時の規模を取り戻すだろうと考えられていた。
それが、爆撃が始まって途端に緩やかになっていった。
完全に停止したわけではないが、増加はかなり抑えられている。
それでもいずれは数を回復し、再び襲来してくるかもしれない。
しかし、それまでの時間が延びるのは確実である。
人類は自らの手でほんの少しの猶予を手に入れる事が出来た。
この時間を使って、出来る事を少しずつ進めていく。
陸路は舗装されていき、滑走路も新たに舗装されたものが造られていく。
また、この期間の中で製造に時間がかかっていたものが完成したりもした。
それは港や発電所であったり、鉄道であったり、船舶であったりした。
出来上がったものが稼働していく事で、新地道の生産性も上がっていく。
単純に敵の出鼻をくじくだけでなく、そうやって得た時間がもたらしたものはとてつも無く大きい。
自分達の体制をよりよいものにする事は、その分だけ戦力の向上にも繋がる。
爆撃自体の効果は薄いかもしれない。
しかし、それによって得られたものは無視出来るほど小さなものではなかった。
それでも敵は数を増していく。
破壊よりも増加する速度の方が大きいのは覆しようがない。
押さえつけてはいても、減少させてるわけではない。
完全に消滅してない以上、ここで終わりという事にはならない。
以前に比べれば時間はかかる。
それでも着実にされていく増産によって、敵は再び大きな集団を形成していった。
前回の攻勢から三ヶ月。
敵は再び進撃を開始した。