109回目 前進
消耗した弾薬や燃料、怪我人の後送に新たな兵士の補充。
これらが次々に行われ、最前線は攻勢前の状態を取り戻していく。
死傷者も損傷を受けた兵器なども少なかったが、それでも全く被害がないわけではない。
また、燃料や弾薬という軍隊としての体力にあたる物が大幅に減少していた。
これが回復した事で、彼等はようやく少し前進する事が出来る。
敵が通ってきた跡。
草木が大幅に削られて出来た更地を進む。
幸い、モンスターも機械も出てこない。
機械はまだ完全に回復してないし、モンスターはさすがに警戒しているようだった。
そんな中を戦車や装甲車が進んでいく。
ようやく到着した軍の部隊が露払いとして先陣を切っていく。
その後ろに歩兵や物資を搭載したトラックが続く。
これらがこの先で燃料の補給場所を設置する。
当面の目標は50キロ先。
そこが最初の中継地点になる予定だった。
目標なのは1000キロ先にある平原。
そこに輸送機が発着出来る滑走路を造る。
とはいえ、空港と言う程立派なものではない。
地面をならし、とりあえず発着が出来るようにする。
その為にそこまで辿り着かねばならない。
その為に必要な物資を運んでいく。
舗装もされてない道を進むので、どうしても速度は落ちる。
50キロ進むのも手間がかかる。
進んだ先では必要な機具を設置しなくてはならない。
それが終われば、護衛を残して次に進む。
それでも初日は200キロまで進む。
そこで先頭にいる者達は足を止め、一晩過ごす事になる。
さすがに夜通し作業をするのは難しい。
燃料も消費してるので、その補給が到着するのも待たねばならない。
何をするにしても、次の日を待たねばならなかった。
こうした事を繰り返しながら先に進んでいく。
また、今後を考え地面をならしてもいく。
可能ならばアスファルトで舗装をしていく。
道路の有無で車輌の移動速度は変わる。
今後を考えれば、こういった作業も必要になる。
何せ、これから更に多くの人や物がここを通るのだから。
その為にも、道を繋いでいかねばならない。
なのだが、先に進む毎に進行は遅れていく。
進めば進む程、輸送距離が伸びる。
当たり前だが、この距離の分だけ輸送にかかる時間が増えてしまう。
また、距離が長いので途中で燃料補給も必要になる。
その為の燃料を運搬する為にも時間や人手を割かねばならない。
このため、先に進むほどに進行は遅れてしまう。
人手が増えればどうにかなるのだろうが、現状ではこれ以上増やす事は出来ない。
目標地点が迫れば迫るほど立ち往生を食らう事が多くなる。
戦車などの整備にも時間がかかるようになる。
強力な火力と防御力をもつ兵器であるが、整備にかかる手間も大きい。
ましてしっかりとした設備のある整備場ではない。
どうしても時間も手間もかかってしまう。
これらもまた、前進を阻む要因になってしまっている。
しかし、手入れを怠れば、それこそ置物として路上に転がる事になる。
そうしないためにも、整備員による手入れは欠かせなかった。
そうした事もあって、目的地にまで到着したのが八日後。
彼等はようやく平野に辿り着いた。
そこで彼等はようやく次の作業にとりかかる事が出来る。
本来の目的である滑走路の整備に。
作業はまだ終わってない。
むしろ、ここから始まるのだ。