27、見せ物ではありません
あの眼鏡また謀りやがったな…!
こんにちは、ローゼマリー・ウィステリアです。
何故か私は王都にある紙幣の発行所でお札を数えています。
時は遡って、ジークが課外授業として外に行くという話をしてから、お父様とお母様と予定を話し合って、その予定は結構すぐに決まった。
メンバーはお父様が私に同行して、それに護衛が何人か。
ジークが引率する形になる、課外授業という名のお出かけになったのだけど…。
最初に紙幣の発行所に連れて行かれた。
正直言って、外に何があるかわからなかったので到着するまで全くわからなくて馬車で着いて教えてもらった途端、固まってしまった。
めったにこんな自由に外を出歩けないから楽しみにしていたのに、台無しだわ!
ジークはこの課外授業になるまでにお札数えを練習していたのか、かなり上手くなっていた。
何故わかるかというとジークも一緒に紙幣を数えているからだ。
一緒に二人で数えている姿を発行所の職員とお父様達に注目されるというカオスな空間になっていた。
以下、回想。
「ジーク、どういうこと!」と馬車から降りて紙幣の発行所だと知って、お父様の元からダッシュでジークの元へ行って問い詰めた。
「どういう事も何も計算の授業の成績が良いお嬢様への課外授業ですよ。紙幣の発行所でのやり取りを知っても良いと思いまして。」
と、ニコニコしながら言い放った。これ、お父様にも同じ事言ってるな…!!
「お嬢様、もうここまで来たら観念してくださいね。では行きましょう。」
と言って建物の中に入っていった。思わず立ち尽くしてしまったけれど、それなりに立派な建物だ。
王宮や貴族の屋敷を見ているので、そこまででは無いけれど、元日本人の感覚からしたらやっぱりでっかい。
私はため息を吐いて、こっちの銀行のような所を知るのも社会勉強か…。と思ってお父様達と入っていった。
身分証明的な要求をされて中に入ると、太ったゴマすりの得意そうな職員に貴族向けの待合室のような所に通されそうになったけれど、ジークが説明してくれて、平民でも入れるようなカウンターへ行く事になった。
よく考えたら、こっちの平民用の所がジークがいつも通ってるとこなんだろうな、と押し問答してるジークを見て思った。
さすがに普通の業務の邪魔をする訳にはいかないので、違う一画での対応になったけれど、貴族が直接発行所に来る事自体あまり無いらしく、某御老公みたいな扱いになった。このお貴族様が目に入らぬかという感じだ。
押し問答してる所を見て思ったけれど、ジークは面倒くさい客としの扱いを受けてて、わかる。と思ってしまった。
「お嬢様、こちらへどうぞ。」と言ってジークがいたカウンターへ促されたので近づいていったけれど、背が小さくてカウンターの人が見えない。
カウンターには何人かの人がいるけれど、笑顔で接客という人は一人もいない。
お父様が抱っこしてくれたけれど、発行所の人が椅子を用意してくれて、座る事が出来た。
「旦那様、よろしいでしょうか?」
「良いけど、本当にローズに出来るのか?」
「大丈夫です。お嬢様、この間やったお金の授業の分ぐらいの金種をこちらのカウンターで頼んでみてください。紙幣分です。」
一回しかやってないのにスパルタかよ。
「えぇと、1000スーク札100枚と10000スーク札10枚と100000スーク札1枚…で良かったかしら?」
とジークを見ると頷いた。
「では、その分頼めるかしら?」とカウンターの人に言うと、私とお父様を見て緊張した面持ちだったけれど、お父様のウィステリア家の紋章の確認と私にお金を引き出すための証書…のような物を出してきた。
お金を引き出す場合はこれを読んでサインしないといけないらしい。
さすがに難しい単語が並んでいるけれど、私はそれを読んでからサインの欄に自分の名前を書いてからカウンターの人へ渡した。
カウンターの人は確認すると、私が言った分のお金を用意してくれた。
確かに100枚分はケースに入っているものを出してきていた。
「では、お嬢様。きちんと揃っているか確認しましょう。」
カウンターの人は”え??何言ってんだこいつ”という顔をして眉を顰めてジークを見ていた。
正直、用意されている所を見て思っていたけれど、カウンターでは用意するだけで私達に向けて確認作業をする事が無い。他の所を見ると受け取る側も特に疑問には思ってないみたいだけれど、お金にはうるさかった身としては少々信じられない気持ちもある。
「わかったわ。」と言って数え始めた。お金の授業でもやった数え方だ。
しぱたたたと数えていると、目の前にいる職員も周りにいたお父様達も皆驚いた顔をして私を見ていた。
確かにケースに入っている100枚のはずの1000スーク札は98枚だった。
よくある10枚の束にして積んでいったけれど、目の前にいる職員だけじゃなくその近くにいる周りの職員たちにもびっくりした目で見られていた。
「これは100枚じゃなく98枚しかないわ。これは10枚で束にしているのだけどここにあるのは9束、90枚ね。だけど、最後は8枚しかないの。10000スーク札の10枚は合っているのだけどね。」
「え?ローズそれどうやってるの?というかどうなってるの?父様には早すぎて訳がわからなかったよ。本当に98枚なの…?本当だとしても、そんなに大した事ない誤差なら気にしなくても良いと思うけど…。」
「お父様、お金に関わる事はきっちりやらないと不正に繋がります。2000スークが足りない分を知らない誰かが懐に入れる事もあり得るのですよ。たとえ2枚でもこれがいくつもあったら…。」
「お嬢様の言う通りです。」
「ローズは授業でこの数え方ジークに習ったのかい?それにしても見た事ないけど…。」
と言ってまじまじとお父様はお金と私の事を見てきた。
ジーク~~~~~!!!!!と焦ってどうすんの!とアイコンタクトをする。
「最近、私がお金を確認する時に偶然こちらのやり方が早く数えられるなと思いまして。計算の授業でお嬢様にも教えたら、覚えが早かったので驚きました。やはりお嬢様は優秀です。」
「そうだったのか。意外な才能だなぁ。じゃあジークもあの数え方出来るのか。少しゆっくり見せてくれない?」
と言うとジークも私の隣で私がまとめたお金を数え始めた。めっちゃうまくなってる。
お父様に見せるために心持ち、ゆっくりだけれど、あのたどたどしかった数え方が余裕がある。
「前からケースに入っている紙幣の数に誤差があった事を疑問に思っていまして、この数え方を知ってからは余計もどかしく思いました。」
「そうなんだ。そんな事考えもしてなかったな。この機会だからケースの紙幣の確認させてもらったら?ちょっと見てておもしろいしね。発行所もこれ取り入れられたら、おもしろいんじゃない?」
とお父様が言うと数え方を凝視していた職員の人達が「えっ」という顔をして見てきた。
「100枚のケースで良いの?ウィステリア家でいったん引き出して預けなおすという形で良いから、とりあえず、5ケース頼んでみようか?」
「10ケースでお願い致します旦那様。」
ジークのやる気を感じた。もちろん私も巻き込まれるんだろーなぁあ~。
以上、回想終わり。
そんな事情でジークと二人で発行所の一画を借りて、数えていた。
200枚でもだるいのに1000枚とか辛いわ!ジークは水分飛ばないのかな~?
布を濡らした物を用意してもらってジークにそれとなく察してもらいながら使って数えていった。
職員やお父様達の注目はもちろんの事、平民用のカウンターのため、だんだん発行所に寄っていた平民と思わしき人達からの衆目を遠くから集め始めてしまっていた。
職員もさっきのゴマすりの人や上司っぽい人や奥で仕事をしていた人達も集まってきてしまった。
ぐあぁあ、どんどん大事になってく感やばいぃ…!
早く…早く終わらせなくちゃ…!!
黙々と二人で続けていると、私が7ケース分数えてしまっていた。
「あっ」と思うと同時にジークがごほん!と咳払いをしていた。
終わったと同時にパチパチと周りからバラバラに拍手されていた。なんだか見せ物になっていた…。これは大道芸とかじゃないから…!
結果は100枚ぴったりの物もあったけれど、2、3枚多かったり、逆に少なかったりするものもあった。一番誤差があったのは5枚ぐらい少なかったものだ。
「何回見ても訳がわからなかったけど、ローズがどんどん鬼気迫る顔をしてスピードを上げていったから、驚いたよ…。」
お父様にも信じられないようなものを見た顔をされながら見られていた。かなり困惑しているようだ。
あばばばば…。
「お嬢様にとってはこの数え方を知ってから遊びのようなものに思えたのでしょう。興味のあるものの上達は早いですから。」
ジーク~!たまには頼りになるじゃんよ~!
ジークのフォローに少し感動していると、発行所の上司らしき職員の人に声をかけられた。
ジークの執念を感じたローゼマリー。
ジーク一人で主張してもうるさい客の一人だと一蹴されますが、貴族ともなるとそうはいきません。
今回はストックが無くなって急いで書いたので、少し心配…。
いつも閲覧、ブクマ、評価ありがとうございます。
ファンタジー色強くなりすぎるのも…といろいろ悩んでいたのですが、吹っ切りました。




