神の言葉
「なっ・・・!」
「・・・っ!」
2人は突然の事に咄嗟の行動を取る。
しかし〝その光〟が先程の水晶から放たれた事は明確だった。
そして〝その光〟は段々と落ち着き、カタチを表す。
『あー、呼んだ?』
「は?」
「え?」
『いや、お前らが呼んだんだろ。』
水晶から放たれた光はホログラフィーとなり、空間に立体的な映像として神の姿が映し出された。
「別にアンタのことは呼んでないわよ。」
『そうか、じゃあな。』
「え?え?いやいや。ちょっと待ってください神様。」
『何だよ。俺だって今暇じゃないんだ。』
〝映し出された神〟はいつものようにタバコに火をつける。
「リリィさん、神様には聞くことがいっぱいあるよ。冷静になろう?」
「そうかもしれないけど何か癪なのよ。」
「・・・。神様、まずこの水晶の事なんですが。」
『ああこれ?』
そう言って下を向き、水晶を指さす神。
『これは見ての通りの映写機だ。軽く衝撃を加えると起動する。・・・。見た所リリィがこの球に八つ当たりした。ってところか?』
「フンッ!」
「それで、この空間は・・・。」
『そうか。説明が必要か。』
面倒くさそうな態度は取らず、ゆっくりと椅子に腰を掛ける神。
『知っていると思うがそこが〝ステ振り本舗〟だ。それとその空間からの脱出は諦めろ。俺の指示無しに抜ける事は不可能だ。食料等は不自由のないように俺の使い魔に送らせる。他にも必要な物があったら何でも言え。』
「ちょっ・・・!脱出出来ないって・・・どういう事よ!」
『お前は頭に血が登りやすくていけないな。そのままの意味だ。その空間とこちら側の空間は物理的に隔離されている。天界でも魔界でも下界でも無い。云わば独立したステ振り本舗のみが存在する空間だ。』
「そ、そんな・・・。」
流石のリリィでも笑えない表情で絶望していた。
しかしのケイは冷静な態度を取っていた。
馬鹿だからだろうか。
ならばやるしかない。と、割り切ったのだ。
「それじゃあお客さんはどうやって・・・。」
『天界の者はそちらへ行くことは恐らく無いだろう。俺の仕事だからな。つまり下界、魔界、その他諸々のの者達が来る事になるがその条件・・・それは絶望だ。』
「絶望・・・?」
『この制度が設立された理由は知っているか?』
ケイは悩むことなく即答する。
「人々の抱えた悩みを解決する為です。」
『お前にしてはいい答えだ。だから俺は本当に絶望を味わった者を〝そこ〟に転送する。そいつらの相手をお前らがして欲しい。』
「私達は・・・、何をすれば。」
黙っていたリリィもプライドを見せたのか睨みつける様に神に質問する。
『お前達には力を付与した。右手を上にかざしてそのままスッと下げてみろ。』
ケイとリリィは何も言わずに神の指示に従う。
「・・・これは。」
そうするとホログラフィが映し出される。
見た所これが〝ステータス〟らしい。
『それで対象のステータスを弄り回すことが出来る。とはいえ事件を回避するために天界の者のステータスは弄れない様にした。貴様らが勝手に変えたりする可能性があるからな。』
「なるほど・・・。」
「それじゃあ神、アンタのステータス、見せてもらうわ。」
そう言って神に向け手を振り下ろしてステータスを開示しようとするが、
「ちょっ、何よこれ。出来ないじゃない。」
『ハハッ、お前ならやると思った。残念だが俺にステータスなんて概念はない。人ほど弱くも無いし脆くもない。』
「こんなの・・・、平等じゃないわ。」
『平等にするのが神の仕事だ。そんな神にステータスなんて必要無い。・・・そろそろ時間のようだ。・・・それじゃ最後に一つだけ。』
「・・・?」
『少々、変わった奴らが来ることもあるかもしれない。心配はいらない。俺は常にお前らの動きは見ている。場合によっては俺が指示を下す。何かあったらまた呼ぶといい。』
「ちょっ・・・!」
と、リリィが声を出す時には神の姿は消えていた。
「・・・。」
「リリィさん・・・。」