トップクラスの魔法使い
「アンタ本当に馬鹿丸出しね。ポンコツもいい所。何でこんなやつと一緒に暮らさなきゃいけないわけ?」
「だからってビー玉投げること・・・。」
「ビー玉が可哀想なくらいだわ。」
「あ・・・、」
ビリビリと痛むデコをさすりながら思った。
彼女は、魔法使いと言っていた。
そんなもの存在するなんて、有り得るのだろうか。
「リリィさん、魔法使い・・・なんだよね。」
「・・・
そ、そうよ!それもトップクラスのね!」
リリィはケイに対して珍しく機嫌が良いような態度を見せる。
まるで「何でも聞きなさい!」と言わんばかりに目がキラキラしている。
どうやら自分の実力について話すのが好きなようだ。
「魔法・・・なんて僕の住んでいた世界には無かったんだ。ゲームとか漫画の世界くらいかな?だから少し興味があって。」
「・・・げーむ?まんが?・・・それが何かは分からないけど魔法には様々あるわ。私は攻撃魔法特化だけど治癒も使えないことはないわ。」
「凄い・・・!」
「へっ・・・?」
ケイの純粋に感動した姿にリリィも思わず間の抜けた声が出てしまう。
「本当にあったんだ!ねぇ!良かったら見せてくれないかな!?」
「まあいいけど・・・。」
とだけ言うとリリィは両手を前にかざすポーズを取る。
「杖とかは使わないの?」
「杖なんて魔力を制御する為の初心者アイテムよ。いいから黙って見てなさい。」
満更でも無さそうなリリィはそのまま静かに目を閉じると開いた両の手のひらからフワッと光が生み出される。
「これが・・・、凄い・・・。」
「まあ、この光はただのエネルギー体の塊よ。これ以上やるとこの建物ごと吹っ飛ぶから止めておくわ。」
と言ってリリィは光を右の手のひらで器用に操り、クルンと人差し指を回すと光は消えてしまった。
「リリィさんは・・・。」
とだけ言ってケイは言葉を飲み込む。
「そこまでの力があっても戦争の力にはなれなかったの?」と聞こうとしたのだが馬鹿のケイなりに考えた。
天界では生前の話を掘り下げるのはタブーとされている。
それに彼女のこの間の反応を見る限り、かなり気にしている様子だった。
それも含め、聞けなかった。
しかし、
「私、そういうの嫌いなんだけど?ハッキリ言ってくれる?」
「いや・・・その・・・。」
そのケイのオドオドした態度に腹を立てたのかリリィを腕と脚を組んでケイを睨みつける。
「その・・・、何よ?」
「ええと・・・。」
「だから・・・!」
そして彼女の逆鱗に触れてしまう。
「何が言いたいのよ!!」
テーブルの上に置いてあるもの、ティーカップ、読みかけの本、ビー玉の様な水晶まで怒りに任せて薙ぎ払い、水晶が地に着く瞬間眩い光に包まれた。