55回目の奇跡
「うわっ!ちょっ!痛っ!」
「お前も2度と来るな!!」
「うぅ・・・。」
ケイもまた神の下僕達によって神の間の門から放り出されてしまった。
「いたた・・・。放り投げる事無いのに・・・。」
もう大分慣れてきたが相変わらず岩盤に放り投げられるのは痛いものだ。
(でも昔より放り投げれた時の痛みが小さい・・・!僕も成長しているんだ!)
と、意味不明な解釈をしていると突然声を掛けられる。
「あら・・・、アンタも放り出されたのね。滑稽な姿よ。お似合いね・・・。」
そう言う彼女は先程の少女、リリィだ。
口調だけで分かってしまう。
しかし先程の態度とは全く別人だ。
投げ出された衝撃で白いローブが痛み、泥塗れになり小さく体育座りをして落ち込んでいる様子だ。
(さっきの僕と似てるって言われたの傷ついたのかな。)
そう思ったケイは彼女に声をかける。
「あ・・・さっきのは気に「私、時間が無いの。」・・・・へっ?」
「私が死んだ理由は戦死。種族の争いによるものだったけど何の力にもなれずに死んでしまったわ。」
「・・・。」
少女はぽつりぽつりと零すように続ける。
「戦争が始まってから一年が経つけれど未だ戦争が終わる気配も無い。聞いた話だと私の種族がおされてるみたい。このままじゃ絶滅も近いわね。」
フッ、と情けない表情で笑い立ち上がるリリィ。
「ダメみたい。私じゃコツコツなんて到底無理。諦めるしかなさそうね。じゃあ。」
「ちょっと待って!」
「何?醜態晒したしあなたにあまり顔を見られたく無いんだけど。」
「何言ってるか半分から分からなかった!」
「・・・アンタもしかして馬鹿なの?」
「何言ってるか分からなかったけど諦めること・・・、無い・・・と思う。」
「ハァ?アンタ何言ってるか分かってるの?今ほっぽり出されたばっかりよ?」
「リリィさん・・・だったよね。今月何回神の間を襲撃したって言ってたっけ?」
「襲撃・・・54回よ。それがどうしたの?」
それを聞いてスクっと立ち上がりニコッと笑うケイ。
「それじゃあ55回目で奇跡が起きるかもしれないよ!」