魔術師の注文 2
「魔術剣?」
聞き慣れない言葉に、俺は首を捻る。
「そうよ、魔術剣」
俺の質問に答えた、彼女の名はアリカ。
魔術協会に所属する魔術師であり、協会の中でも優秀な魔術師だそうだ。自称だがな。
「魔術が掛けられた剣でね、持ち主の意志で宙を舞い、敵を攻撃してくれる剣なのよ」
「どんな武器かは分かった。だけどそれは、武器屋というよりも、魔術師が作る武器なんじゃないのか?」
もちろん、剣なら作れる。だが、それに魔術を掛けるとなると、それは魔術師の領分だ。
「あら、魔術師は剣なんか作れないわよ?」
面白そうな顔で、彼女がそう言ってくる。それを半眼で睨んでやると、
「冗談よ。実は作るのには、手順があってね」
そう言って、アリカは説明を始める。
「まずは剣ね、これには、魔術を記憶させる特殊な鉱石が必要なの。まぁ鉱石のある場所は分かっているので、あとで説明するわ」
場所が分かっているなら話が早い。どこに素材があるか分からない状態では、何年掛かるか、分かったもんじゃないからな。
「次に、剣にかける魔術なんだけど……実はその魔術っていうのは、古代魔術なの」
「古代魔術っていうと、古文書にしか残ってなくて、現代じゃ使える人間がいないっていうやつか?」
魔術というのは、遥か昔から存在しているらしい。その永い年月の中で、途絶えてしまった魔術が、いくつもあるという。
今回、剣にかける魔術も、その類いのようだ。
「そうなのよ。だから今現在、世の中に出回っている魔術剣は、遺跡で発見されたものしかなくて、大変貴重なのよ。そんな剣を作れたら、すごい事じゃない?」
「作れたらな」
俺は、興奮気味に語ってくるアリカに、適当な返事を返しつつ、疑問に思った事を聞く。
「剣はいいとして、魔術の方はどうするんだ? もしかして、お前は古代魔術が使えるのか?」
「もちろん! と、言いたいところだけど、私はまだ、その域に達していないわ」
そう言って、残念そうに項垂れるアリカだったが、
「けど、これを見なさい!」
次の瞬間には、勢い良く、顔を上げ、手に持った紙の束を、こちらへと突き出してくる。表情がころころ変わる奴だ。
「これは、古代魔術が書かれた古文書を写したものよ。これを解読すれば、私でも古代魔術が使えるわ!」
「で、解析はできたのか?」
勢い良く語るアリカに、冷静に質問する。
すると、彼女の勢いは衰え、しぼんでゆく。
「まだ六割くらいしか……だ、だけど、呪文の核となる部分は解読出来ているから大丈夫! あとは、フィーリングで何とかなるわ!」
これは失敗しそうだなぁ。とは思ったが、何とか表情に出すのは堪えた。頭痛はしてきたが。
「どれ、ちょっと見せてみろ」
「ちょっと! 貴重な文献なんだから大事にあつかってよね!」
抗議してくるアリカを片手で押さえつつ、文献に目を通してみる。
文献には、難解な古代文字が並んでいる以外にも、彼女なりの解釈や注釈などが、びっしりと書き込まれており、彼女の熱意の程が、良く伺えた。
「お前って、結構、頑張り屋なんだな」
「な、何よいきなり!? 褒めたって何も出ないわよ!」
こちらとしては素直な感想を言っただけなのだが、彼女はお気に召さなかったらしい。
顔を赤くすると、そっぽを向いてしまった。
実は、自分の弱点の1つにネーミングセンスの無さがあります。
英語に強くもなく、厨二的なネーミングも思いつかないので、作中登場人物の名前や武器の名称などは、結構適当です
どうか生暖かい目で見てやってください・・・