六冊目《福助探し》
つめ先に、コップの水滴が一粒。
白川先生の額にも、一粒。
時刻は日付を変えて、午前の3時。
チョコレイトの入ったガラスケースは、空になっていた。
「紫苑~…もう一個…」
紫苑、というのは僕の名前だ。
先生はいつも二人きりになると、名前呼びする。
「駄目です。先生が来るといっつも商品切れです」
「えぇ~?金とんのかよ~」
「もちろん。チョコレイト代、1500円です」
「うわっ、ぼったくりだ」
「手作りなんだから当たり前です」
僕は先生に手を差し出して、御代を頂く。
「あ、送り代も貰っときます。しめて2000円っ」
「うへぇ~悪徳商売っ」
「どうとでも」
僕は真っ暗な外を眺めながら、福助の帰りを待っていた。
いつもならこの時間帯に帰ってくるのに。
どうしたんだろう。
時刻が4時を差しても、福助は帰ってこない。
だんだん心配になってきた僕は、店の周りを見渡し、福助の名前をよんだ。
「福助ー!!」
でも、福助の声は聞こえてこない。返事すらない。
「先生、帰りは少し待って下さいっ!福助が居ないっ」
「マジでか!?福のやつが居ねえと、お前が帰れねぇじゃねぇか」
「いや、帰れますけど…」
そう言って、僕と白河先生は福助を探しに森の中を走り出した。