五冊目《出会い=鼻血》
ずりずりと音を立てながら開く装飾の施された巨大なドア。
僕は開いた先に居るお客様に、声をかけた。
「……お客様、また帰れなくなりますよ?」
「お客様じゃなくて、白河先生だ」
「分かっていっているんですっ」
へらへらと笑いながら入ってくる白衣に呆れながら、乱暴にコーヒーを置いた。
白衣はカウンターの僕を見ると、
「しっかし、何で本屋って書いてんのにカフェちっくなとこになってんだよ」
「それは自分で考えください。はい、チョコレイト」
コーヒーの横に、家から持ってきたチョコレイトを二つ置く。
彼は白川左京先生。
もっとちゃんと身なりを綺麗にすれば、少しはもてるだろうその顔は
ぼさぼさで枝毛ありすぎ。前髪で殆ど見えない。
おまけに少しだけ見える目元は隈で怖い。
先生との出会いは簡単に言うと「鼻血」。
保健室で治療を受けようとして中に入った僕は、顔を上に上げて「むー!むー!」と
言っていた先生を見つけ、逆に治療する破目になった。
ティッシュペーパーの箱すらない保健室の中で、この人はチョコレイトパック
3袋を平らげていたのだ。
自己管理の出来ない大人って、子供から見ても情けなく感じる。
はぁ。また鼻血出さないといいけど。