四冊目《夜色ワンピース》
まだ家にも着いていないというのに、時刻は午後9時。
しまった。これでは開店時間に間に合わない。
焦りを感じながら、僕は帰り道の森を駆け抜ける。
森の奥深くまで進むと、いつも一緒に居る梟の福助が、鳴き声を上げながら僕の肩にのった。
「ホー、ホー」
「うん。ごめんね、遅くなっちゃった」
福助の言葉はよく分からないが、僕を心配してくれていることは確かだ。
急いで家に向かって走り、鍵を開けて部屋に入った。
生活用具以外、何も置いていない殺風景なリビングの上にカバンを置いて、クローゼットから
いつもの夜色ワンピースを取り出した。
無地の夜色ワンピースを頭からかぶり、もごもごと生地の違和感と戦いながら、リビングのキッチンに向かう。
冷蔵庫から透明のガラスケースを取り出して、その中に手作りのチョコレイトをどっさり入れた。
それを両手に抱え、僕は家を出た。
「ホー?」
「うん、この調子なら十分間に合いそうだよ福助」
福助はそれを聞くと、安心したような声で僕の肩から離れた。
夜の空へと飛んだ福助を見送った後、再び森のさらに奥へと足を運んだ。
さて、今日はどんなお客様が来るだろうか?