4/27
三冊目《愛している》
愛、というものは好きな人以外にもいえるらしい。
たとえば、親とか、兄弟とか、自分の子供とか。
「愛している」の言葉は、今年、初めて聞いた。
だがしかし、それは僕に向けられたものではない。
物語の中なら言ってもカッコイイ、おかしくないかもしれない。
修羅場の中で初めて聞いた、「愛している」。
「私はこんなに愛しているのにっ」
なんか馬鹿馬鹿しくて笑ってしまいそうになった。
それを聞いて、小野田先生は顔を顰める。
「アタシの方が、拓のこと愛してるわよっ」
「五月蝿ぇ」
小野田先生がぼそりと呟いた。
それに驚いて女性二人は、口を閉じる。
「お前らのことなんざ、愛しても相手にもしちゃいねぇよ。
とっとと失せろ」
小野田先生は二人の襟首を両手でつまむと、そのまま職員室の外へ放り出した。
そしてくるりとこちらに向けた視線の先は、僕に。
「送ろうか?」
「いいです、送ってくださるのは嬉しいですが、遭難しますよ?帰り」
先生の差し出した手を軽く叩く。
小野田先生は、「残念」と言って僕を学校門前まで見送ってくれた。