二冊目《ありえないのですが。》
はげしい罵り合い。
それが、職員室から聞こえてくる。
「貴方っ!私とこの女、どっちが大事なのよ!?」
「んー、仕事?」
「ふざけないでよ!!この五月蝿い女とアタシ、どっちが大事かって聞いてんの!!!」
「失礼ね!アンタみたいな老け顔、誰が相手にするってのよ!」
「何ですって!?アタシはまだぴちぴちの26歳ですー!」
「ぴちぴちって言うところから強烈な加齢臭がするのよっ」
少し覗いてみると、そこには僕のクラスの担任を挟んで、女性二人が言い合っている。
その中で悠長に飲み物を飲む先生は、片手で携帯をいじっていた。
この空気を壊すと面倒なことになりかねないのは確かだが、この鍵を先生に渡さないと帰れない。
小さく呼吸を整えて、職員室の中へと入っていった。
「小野田先生。柊です、教室の鍵を返しに着ました」
「おっ、柊!ありがとなー」
小野田先生は、僕のクラスの担任であり、女子保健体育を担当している。
その小野田先生は、職員室ドアの近くに来た僕を見て座っていたソファから立ち上がり
僕を手招きで呼ぶ。
これで確実に、面倒ごとに巻き込まれるのは確定した。
「柊は優秀だなー、先生が将来お嫁に貰ってやってもいいぞ?」
「なっ……!!拓也、また女つくってたの!!?」
いや、ありえないのですが。