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十六冊目 《邪魔したら》
パイの香りがリビングに残ったまま、いつものワンピースを着て家をでる。
外はいつも通り、星が綺麗に見えていた。
店の方向に向かって走り出す。
今夜は大事なお客様が、一人来る。
福助の話は、それからだ。
「お、紫苑。お前店の鍵持ったまんまだったんだろ」
「あれ、福助なら合鍵の場所知ってるはずなのに」
店の裏口で体を摩る白河先生は、僕の返事にキッと梟姿の福助を見た。
福助は「ホー」と先生を無視して周りを飛び回っている。
「今日は大事なお客様が来られるので、あまり邪魔しないでくださいね」
二人(というか一人と一匹?)に言いながら、裏口に入り、店のドアを開けて二人を入れた。
福助は店の中に入ると、みるみる転入生の姿に戻っていく。
「お前すげぇな……キモい」
「キモいとか言うな」
「はい、玄関前で喧嘩しないで」
二人を店の奥のテーブルに座らせると、キッチンから持ってきたチョコレイトを置く。
「今日はタダであげますから、邪魔は禁止です。邪魔したら、一ヶ月チョコ禁止っ」
「えー」