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十四冊目 《笑顔の作り方》
ずる賢い幼馴染は、僕をクラスから孤立させた。
まず最初は、定番ともいっていい靴隠し。
次に、体育館倉庫に閉じ込められた。
これはよくあったことで、なんとなく慣れてしまった僕は広い倉庫の抜け穴から出ていた。
先生に告げ口をしようものなら、また面倒なことになる。
だから黙っていたのだけれど、中学に上がるといじめはエスカレートしていった。
噂話に暴力、噂が広まり孤立状態。
いつのまにか、ため息は止まらなくなり、涙は出ることがなくなった。
笑顔の作り方も、もう直ぐ忘れてしまいそうな気分。
「紫苑?」
「……え、あ…」
暫く黙り込んでいた所為か、昔のことを思い出してしまった。
僕は残りのコーヒーを口に入れ、頭の中から記憶を消す。
「お前にお客さん来てるぞ?」
「……はい?」
先生が指差した先を見ると、そこには転入生の姿が。
「しーおーんーっ!!」
はぁ。この人のことも、先生に言ったほうがいいのだろうか?