十三冊目 《タバコって》
いまの季節は冬だというのに、だされたのはアイスコーヒー。
「先生、何でアイスコーヒー?」
「んだよ、うまいぞ?」
「はぁ…頂きます」
しぶしぶ冷たいアイスコーヒーを口に運ぶ。
保健室はすべての窓が閉められていて、あまり寒くはないが、暖房が効いていないため
肌寒い。
おまけにそんな中でアイスコーヒーを飲むのだから、ぶるるっと鳥肌が立つ。
「んで、昨日のことなんだがよ」
「あ…はい」
先生は僕と同じようにコーヒーを口に含むと、一息おいて話し始めた。
「あのときに足場が崩れて俺ら、落ちたんだよな?」
「はい。気づいたら何でか、自分の部屋にいました」
「俺もだ。玄関だったけどな」
先生はコップをテーブルにおいて、腰のポケットから何か、箱を取り出す。
それの中から筒状の細いものを出すと、それを口に銜えて立ち上がる。
奥にあった鞄から、ライターを取り戻ってきて、銜えた筒に火をつけた。
「あ、お前タバコの匂い、駄目だったか?」
タバコ?タバコって何?
「………はい」
タバコとは何かと聞けば、先生の反応がなんとなく想像できる。
恥ずかしくなったので、僕は顔を下に向けた。
よし、帰ったら絶対調べよう。