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十二冊目《この人の隣》
この階段を下りれば、保健室にたどり着く。
僕はあの五月蝿い転入生を振り切って、ぜぇぜぇと息を切らしていた。
よろよろとふらつきながら、保健室のドアを開ける。
「白河…先生……」
「……どした、紫苑」
保健室には、いつものぼさぼさ頭が奥のソファから覗いていた。
それにほっと安堵の息を漏らしながら、中に入り、ソファの向かい側の椅子に腰をかける。
「頭、ぼさぼさだぞ」
「えっ、あ……」
「女なのに何やってるんだよ」
「……先生に言われたくありません」
「ははは」
軽い会話を交わしながら、僕は腰のポケットから、淡い紫色の袋を取り出す。
それに反応した白河先生は、子供のように目を輝かせて聞いてくる。
「チョコか!!?」
「…飴です」
「えー!!」
ああ、やっぱりこの人の隣に居ると落ち着く。
安心感の中に少しの不安があったが、それは先生がコーヒーを出してくれたら話すことにしよう。