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Julia  作者: 朔立花
第3章
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古城の主

 妙なうめき声を上げて、アルベルトはベッドの柱に激突した。白目をむいて気絶している。

「すごいな。足蹴りだけで、こいつを気絶させるなんて」

 感心したという表情で、シーズがベッドに近づいてくる。

「あんた見てたの!? 私のこと助けなさいよ!」

「助けただろ。体が動くようにしてやったし」

 シーズは泥で汚れたつなぎのまま、アルベルトを担いで運びソファーに転がした。シーズはアルベルトより背が小さかったけれど、軽々と運んでいた。野良仕事で鍛えられているんだろうか。

「さて、ジュリア・ドゥナ」

 シーズが、ベッドに座ったままのジュリアに近づいてきた。思わずジュリアは身構える。

「さっきのは仮契約だ。本当に俺と契約するか? 俺は嘘はつかないぜ。本当にあんたの願いを叶えてやる」

 楽しそうに、シーズは笑う。

「『一生無敵』なんて、叶えてやれるのは俺くらいだ」

「あなた、アルベルト達とも契約をしているんじゃないの」

 ジュリアは気絶しているアルベルトをちらっと見た。まだ起きてくる様子はない。

 カラカラと乾いた声でシーズが笑った。髪をかきあげながら、ジュリアに背を向けて離れて行く。

「俺はドゥナ家の人間以外と、契約しない」

 振り返った。

 クリンクリンの金髪が、たちまち針のような白髪になった。白目は青白く、瞳は赤く変わる。日に焼けた肌を、手で剥ぎ取った。ジュリアと同じくらい、白い肌。

「アルベルト達は、ドゥナ家の人間じゃないの」

「ああ。城にコソコソ住み着いている吸血鬼さ。人が来ると俺を弟として紹介してるだけで」

「なるほどね」

 もう、ジュリアは驚かなかった。こんな人里離れた不気味な城に居るくらいだ、どんな化け物であってもおかしくない。

「あなたは? あなたは何者よ」

 ジュリアはベッドから降りて、真っ正面からシーズを見た。

 一定の距離を置いて、二人とも動かない。

 ややあって、シーズが動いた。

「知りたいか?」

 ゆっくりと、ジュリアの方に近づいてくる。 

「もう薄々気付いてるだろう?」

 ひんやりと冷たいものが、ジュリアの首に触れた。よく研がれた、野良作業用のナタ。

 シーズが、まるでジュリアを睨みつけるようにして、笑った。

「俺は悪魔。そして、この城の主だ」


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