斧を研がない理由
ガヤガヤガヤ…
「エリオットくん、また一位?」
「しかも学科も魔法実技も?」
「よくあの課題でこんな点数取れるな…」
廊下に張り出された順位表を見て、奴らはそんなことを口にしていた。
俺にはただの数字の羅列にしか見えない。
「エリオットくん、今回もすごいね!おめでとう!」
クラスの女子が浮き足立って、駆け寄ってきた。
他にも何か物言いたげに、そわそわしているが、俺はそんな彼女の態度を無視して
「どうも」とだけ言って、その場を立ち去った。
今回の課題はなかなか骨が折れそうだ。
クラス発表は3日後。その発表で1位を取れば、学年で発表出来る。
早速課題に取り組もうとすると、教室の窓際の後ろの方が騒がしい。
イライラしながら振り返ると、陽キャ連中が課題をするのに集まってた。
その中心にいるレオと不覚にも目があってしまい、レオは俺に大きく手を振りながら叫んだ。
「おーい!エリオット!お前も一緒にやらない?」
今までろくに話したこともないのに、まるで旧友のようなテンションで話しかけるレオに驚きを隠せなかった。
「いや…。いい。」
「えー!なんでだよ!一緒にやろうぜ!」と、言いながらレオは俺の方に近づき、馴れ馴れしく肩を組んできた。
「お前がいれば学年でトップ取れるぞ!
それに一緒にやった方が楽しくない?」
太陽のようなその笑顔を覗き込ませながら言う。
その無邪気な笑顔が妙に腹が立ち、肩に置かれたレオの腕を振り払いながら
「やらないって言ってるだろ!」と、感情的に怒鳴ってしまった。
レオから笑顔が消えた。
教室がシーンと静まり返り、クラスの女子がレオの手を引き「行こ」と言って俺から離れた。
それから3日間、俺は1人でさまざまなツールを駆使したり、魔法書から手がかりを得て実際に実験したりして、完璧な課題を完成させた。
これならクラスで一位、いや、学年でも遜色なく戦えると意気込んで、自信満々に発表した。
結果、レオのチームが選ばれた。
「協力してくれた、助けてくれたみんなのおかげです!ありがとう!!」と、
レオは勝利スピーチを叫んだ。
俺の知る限り、アイツは人に聞きまくってただけだったろ?そんな奴が俺より上なのか?
釈然としない。
だけど。
もしかしたら、このやり方の方が合理的なのか?
次の課題が出された。
今度は一人で取り組むものだが、周りの人にも聞いてみようと先生や先輩に話しかけてみた。
「…ということについて、簡潔に回答お願いします。」
「ここはどうしたら、もっと効率よくなりますか?」
自分なりに歩み寄ろうとしたが、どいつもこいつもたじろいでしまい、うまく答えてくれない。
結局1人でやることにした。
…また同じやり方かよ。
変われないままだけど、ほんの少しだけクラスメイトのざわつく声が耳に入るようになった。




