星空のような可能性
数週間後、酒場の扉が開く音が、夕暮れの柔らかな光とともに響いた。
カウンターの木目は、使い込まれた艶を帯び、
グラスが並ぶ棚に、淡い橙色の陽が反射している。
マリーとケィティは、少し疲れたが晴れやかな表情で入ってきた。
マリーが穏やかに声を掛けた。
「こんにちは〜」
ケィティも、赤いマントを軽く払いながら。
「王都まで護衛の仕事、無事終わったので報告に来ました」
ゲイルはグラスを拭く手を止め、二人の顔を交互に見た。
口元に、いつものような笑みが浮かぶ。
「おう、お疲れさん。今回の仕事は直接依頼主から、金受け取っただろ? どうだった? 魔物の襲撃とかあったのか?」
マリーは小さく首を振り、安心したように答えた。
「あっ、大丈夫です。魔物の襲撃はありませんでした。」
ケィティも、静かに付け加えた。
「こういうお仕事なら、何度もやりたいですけど……やっぱり、本当に魔物に襲撃される事もあるから、ちょっと怖いですよね?」
ゲイルは軽く笑い、肩をすくめた。
「お前ら、随分、仕事出来るようになってきたなぁ? そうなんだよ。どうせ魔物の襲撃なんてねぇだろって、舐めた仕事をするヤツがいるんだよ……まぁ、それで……属性解析の方はどうだったんだ?」
マリーは少し身を乗り出し、報告を始めた。
「あっ、それなんですが、私ゲイルさんの言った通り、闇属性に加えて光属性の資質もあったみたいです」
ゲイルの目がわずかに輝いた。
「おぉ、やっぱりか? それで闇属性と光属性の複合属性ってのは、どういう事が出来るんだ? リサは何か言ってたか?」
マリーは頰を軽く緩め、言葉を続けた。
「リサさんが、星空を作り出すような魔法がいいんじゃないかとアイディアを頂きました」
ゲイルは顎に手を当て、ゆっくり頷いた。
「あ〜、なるほどね。夜空の闇と、そこにある星の光って事か? ふ〜ん、リサも上手い事考えるもんだねぇ」
マリーは少し困ったように笑った。
「でも、星空を作るって所までは発想は出して貰ったんですけど、そこからの発展がわからないんですよねぇ」
ゲイルはグラスを棚に戻し、優しく言った。
「う〜ん、まぁ難しいもんだな? まぁ、そこはお前の頑張り次第じゃねぇの? 俺も依頼見て、お前の星空作る能力が役立ちそうな仕事あったら回してやるから、まぁ気長にやれよ? まだ、自分が複合属性ってわかったばかりだろ? 無理に大きい仕事してくれなくても、いつも通りに仕事してくれりゃ、こっちは助かるからよ?」
マリーは素直に頷いた。
「はい、そうさせて頂きます」
ゲイルは視線をケィティに移した。
声に、からかうような響きを込めて。
「それで、ケィティ。お前はどうだったの? お前も複合属性だったのか?」
ケィティは静かに、しかしはっきりと答えた。
「いえ、私は火属性の単体でした。」
ゲイルは思わず声を上げて笑った。
「ハハハ! じゃあ、お前はただのヘンテコリンな変り者だったってわけか!?」
マリーが慌てて割って入った。
声に、興奮が混じる。
「いえ、ゲイルさん……ケィティは、ひょっとしたら私よりも強い資質あるかもしれないんです……」
ゲイルの笑いが止まり、眉を上げた。
「……ん? どういうこった?」




