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色違いの魔法使い達  作者: 星狼


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2/7

マスターの忠告

酒場の空気は、昼間の熱気が残るように重かった。

カウンターの木目が、拭き跡で鈍く光っている。

ラファエルとダンクは肩を落とし、ゲイルの前に立っていた。

二人の鎧が、わずかに擦れる音を立てる。


ゲイルはグラスを棚に戻し、低い声で言った。


「ラファエル。俺の店で揉めるな。」


ラファエルは慌てて手を振った。


「いや、マスター……でも……」


ゲイルの視線が鋭く、ラファエルを射抜く。


「俺の店だ。もうお前に仕事紹介しないぞ? お前、そんなに金に困ってねぇだろ。無理して、シャドウグールの討伐なんてしなくていいじゃねぇか。それよりも期限が迫ってるゴブリン討伐の依頼があるんだ。それ、色つけてやるから、二人でやって来い。ゴブリン討伐なら二人で十分だろう。」


ラファエルは一瞬言葉に詰まり、やがて肩を落とした。


「まぁ、マスターがそう言うなら……」


ゲイルは短く頷き、帳簿を軽く叩いた。


「よし、頼んだぞ。この嬢ちゃん達には、俺が言っておいてやる。ゴブリン討伐よろしく頼むぞ」


ラファエルとダンクは無言で礼を言い、扉の方へ歩き出した。

二人の背中が、扉の隙間から差し込む光に溶けていく。

扉が閉まる音が、静かに響いた。


ゲイルはゆっくりと息を吐き、残された二人に視線を移した。


「さてさて、お嬢ちゃん達……」


マリーは小さく身を縮め、返事をした。


「はい……」


ケィティも、青いマントの裾を指で軽く握りながら。


「はい……」


ゲイルの声は低く、しかし穏やかだった。

酒場の喧噪が遠くに聞こえる中、言葉が静かに落ちる。


「皆、遊びでやってるんじゃねぇんだわ。」


マリーの瞳がわずかに揺れた。


「えっ?」


ゲイルはカウンターに肘をつき、二人を見据えた。


「好きな服着て、お洒落したらいいってもんじゃねぇ。服の色見て、皆、何が出来るか想像して、ああやって声かけてくるんだよ。これは仕事なのよ。嬢ちゃん達みたいな自分の好きな服着て依頼眺められると、ああいう無駄なトラブルが起きちまうんだよ」


マリーは唇を軽く噛み、視線を落とした。


「は、はい……」


ケィティも、頰をわずかに赤らめて。


「申し訳ありません……」


ゲイルは肩をすくめ、棚から小さな帳簿を取り出した。

ページをめくる音が、静かに響く。


「闇魔法使いなら黒だ。火魔法使いなら赤だろ? うちで仕事するならせめて、マントだけでも買って来てくれ。マント買う金がねぇなら、2名の薬草摘みの仕事紹介してやるけど、どうする?」


マリーは少し間を置いて、ゆっくり頷いた。


「あの……それじゃあ、その薬草摘みの仕事お願いします……」


ケィティも、静かに頭を下げた。


「ご迷惑かけて申し訳ありません。」


ゲイルは帳簿を閉じ、軽く笑みを浮かべた。

それは、疲れたような、優しいような表情だった。


「いいよいいよ。こっちも薬草摘みの仕事するヤツいなくて困ってたんだ。だから、今日はこれからうちで仕事する為の服を買う仕事だな。頼んだぞ。」


カウンターの向こうで、グラスが一つ、静かに置かれた。

午後の光が、酒場の床に細長い影を描いていた。

二人は小さく礼を言い、扉の方へ歩き出す。

その足音が、扉の軋みとともに消えていく。

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