41.僕が父の右腕となる
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「ありえない…ありえない!!!」
ピエイロはポケットから新しい杖を取り出すと父に向けて氷の矢を放った。けれどそれを予期していた父は小さく魔法盾を作り氷を弾き飛ばし、お返しに小さく炎の弾をピエトロの腹にぶち込んだ。声にならないうめき声をあげて体を折り曲げたピエトロは、そのままへなへなと崩れ落ち、座り込んで背中を丸めた。父が憐れむようなため息をつく。
「あきらめろ」
「私が…古ぼけた田舎者どもに負けるわけがない。こんなところで終わるわけがない…終わるわけがない…そうだ…終わらないさ私は…」
小さい声でつぶやくピエイロのみじめな態度に、ファミリーの面々から苦笑が漏れる。
「認めない…私が負けるなど。そうだ私はまだ負けていない…お前たちは知らないのだな。私が…どんなに恐ろしいかを!!!!」
突然大声を上げ跳ねるように立ち上がったピエイロに驚いて、皆は杖を取り出す。けれどそれよりも早くピエイロは胸元から新たな杖を取り出し父に向けていた、その杖の先は怪しく紫色に渦を巻いて光り、あっという間に巨大な熱球を作り出した。
「あれ…薬草の力!!」
アリアンナが目を見開いて叫んだ。ファミリー全員も信じられないものを見た表情で思わず後ずさり慌てて杖を構える。
「ステファノからいただいたよ!!」
ピエイロが絶叫し杖を振ると、巨大な熱球が放たれた。その反動で、杖を振ったピエイロが後ろにひっくり返る。制御が効かなかった熱球はその表面をいびつな魔力でゆがませながら…ゆっくりと着実に僕を目掛けて近づいてくる。だんだんと視界を覆っていくその熱球から僕は目が離せず動くことができない。
「熱球を狙え!」ベルナルドが叫ぶ。全員がありとあらゆる魔法を放ちまくり無効化しようとするが、熱球はすべてを飲み込み接近してくる。顔にじりじりと熱を感じ、髪の毛の先が焦げる匂いがする。僕は死ぬ。そう悟った時、僕の視界を父の右腕が遮った。凍って動かなくなった右腕が。父はその右腕を熱球に押し付けた。
「ぐぬぬぬううう!!!」
歯を食いしばった父が悪魔のような顔で熱球を押し戻そうとしている。氷が解けるジュウウという音が聞こえる。父のスーツに火が付き燃え上がった。
「うおおおおお!!」
ボシュウ!という鈍く爆発する音とともに父の右腕が砕け散り、魔法の熱球は分裂して四方に飛び散った。皆は飛散した炎を避けるため腕で頭をかばい姿勢を崩した。僕の視界は開け、向こうに尻もちをついたピエイロが信じられないという顔でこちらを見ているのがわかった。
「ルチアーーーーノ!!!」
父が叫ぶ、僕ははっとして杖をピエイロに向けた。ピエイロも慌てて次弾を用意する。僕は父の右腕があったその場所に、父の右腕の代わりに自分の右腕を差し出し、杖の先端をピエイロに向けた。
「風球!!」
杖の先に生じた空気の渦が一瞬にして塊となり、部屋を切り裂く透明な大砲のように飛んでいく。ピエトロの杖の先に膨らみ始めた光をかすめ、歯を食いしばり魔法を放とうとしているピエトロの顔を直撃した。ピエトロは頭をガクンと後ろにはじかれ、ゆっくりと後ろに倒れてそのまま動かなくなった。
蟹が好きです。もちろん食べるのが。




