32.ファミリーは三手に分かれ城を目指す
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田園から湖へと続く細い道をゆっくりと車で登っていくと、周りの木々は少しずつ高く多くなり、湖が姿を現すころには完全に山の中といった景色にかわる。山道が二股に分かれているところまで来ると、ファミリーは三隊に分かれた。
ボス・グレコはトンマーゾ、マッテオ、ロッシ、カロジョロを率いて城の正面へ。ミケーレ、メノッティ、レオルーカ兄弟は湖から小舟で城の裏手に回る。そして僕はベルナルドとレーナと一緒に奇襲隊に編成された。杖をぶつけ合いながら、またな、という簡単な挨拶をみんなでかわし、ボス・グレコ隊とミケーレ隊はそれぞれの車に乗り込み去っていった。
残された僕らは車が見えなくなるまで車を見送っていたが、排気音が聞こえなくなると「よし、俺たちも行こうか」とベルナルドは僕の背中を軽くたたいて歩き出した。
「行く、ってどこに?だいたい奇襲隊ってなんなの。」
僕とレーナはあわててベルナルドを追いかける。
「そりゃあ、思いもよらない時と場所からかっこよく現れるのさ」
ベルナルドは振り返らないまま、大まじめに答える。
「なにそれ」とレーナも反論する。
「かっこよくなんて本人の主観じゃない。そもそも思いもよらないとこってどこなの? カーテンの中? 床下? 空?」
空?
「あ」と僕とレーナが同時に声を上げる。ベルナルドが立ち止まって振り向き、ニヤリと笑う。
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ボス・グレコ率いる正面突破部隊は、古城正門へ続く石造りのアーチ形トンネルの前に到着していた。窓もない薄汚れた壁が四方を取り囲んでいる砦のような古城にはほかに入り口らしきものはなく、このトンネルが唯一の侵入経路のようだ。どこかに見張りが潜んでいるはずだったがその気配は完全に消され、木々が風に揺れ鳥のさえずりが聞こえる以外の音は何も聞こえてこないその静けさが、森に仕掛けられた巨大な罠のような古城の恐ろしさを演出していた。
大きく息を吐いたロッシの様子を察して「怖いか」とグレコが声をかけた。
ロッシは小さく何度も首を横に振る。
「深呼吸して力を抜け。落ち着いてただ杖を振ればいい。向こうの攻撃は私が防ぐ」
グレコはそう言うとカロジョロに目で合図を送った。カロジョロは一歩前に出ると、しわだらけの手で年季の入った樫の木製の杖を高く掲げた。目をつぶって魔力を集中させる。
「あけぼのの霧」
しわがれ声でカロジョロが呪文を唱えると、杖の先が光りあたりの空気を湿らせていく。やがて霞がかった空気は白く広がりながら古城めがけてゆらゆらとたなびいて、蛇が獲物を締め付けるように全体を取り囲んでいった。そして最後には数歩先も見えないほどの霧が古城をすっぽりと覆ってしまった。
カロジョロががっくりと膝をつき、そのまま座り込む。
「魔力を全部この霧に注ぎ込んだ。あとは若いもんに任せるよ。また後で会おう」
ボス・グレコは小さくうなずき「行くぞ」と皆を促した。
ガブリエル・バンサンの絵本が好きです。




