28.敵地へ乗り込む準備が始まる
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「アリアンナを救出する。」
父、サルヴァトーレ・グレコは強いまなざしで皆を睨みつけながらはっきりと口にした。
事件の翌日、港で戦った者たちの傷も生々しいうちに全員がデュランダの間に集められた。怪我で離脱したのは最初にやられたメノッティだけ。本土での怪我が完治しないガエターノを除き、後の全員が軽傷でここにいるというのはコルレオ・ファミリーがいかに猛者揃いかを表していた。
父がきっぱりと言い切った後も部屋は静まり返ったまま。父は、ファミリーに内密でアリアンナに命じ魔法薬草の研究をしていたこと、それがステファノの事件から始まった今回の抗争を招いたことを説明し、そのまま頭を下げて謝罪した時はさすがに皆がぎょっとした。父は頭を下げたまま言葉をつづけた。
「すべての責任は私にある。ファミリーのみならず、島の住民をも危険にさらしてしまったことは決して許さることではない。私はボスの座を降りようと思う。」
「そりゃあいかん」
カロジョロ爺が口からこぼれるように吐き出し、それをきっかけに皆もざわざわと続く。だめです、やめないでください、困ります。懇願する声が溢れる中、父は下を向いたまま黙っていた。僕は口を半開きにしたまま父を見ていた。父がボスをやめる? そんなふうに考えていたなんて想像もしていなかった。
「ただし」と父は喧騒をさえぎって続けた。「この一件は私が全てを懸けてけりをつける。アリアンナを取り戻すということは、カモメの牙を潰し、この島にもう一度平和を取り戻すということだ。そして、コルレオ・ファミリーを舐めるとどういうことになるか全てのファミリーに知らしめる。」
一人でも本土に向かう覚悟だという父を皆で制し、3日後の朝、全員で本土に向かうことが決まり会議は終わった。カモメの牙はレッツァという街を本拠地にしている。全員で乗り込むということは、完全に決着をつける戦いを挑むということだ。勝利か、全滅か。誰もが緊張した顔つきで部屋を出ていく中、ロッシはおどけた調子で「大丈夫だ、上手くいくって」と僕の肩を叩き、「俺がアリアンナを助けて、交際を申し込む。よろしくなお兄さん」とお辞儀をして去っていった。彼の明るさはいつだって面倒くさかったけれど、この時は少し心が緩んだ。それでもみんなが帰った後、玄関から続く庭のハーブを眺めながら何日か前に見た妹の姿を思い出していたら、悔しさと怖さが溢れてきて吐きそうになった。下を向いてこらえていたら目の前の砂利が濡れてきて、自分が泣いているとわかった。
アリアンナはかけがえのない存在だ。喧嘩をしても、生意気な口を利かれても、褒めなくても、いなくなるなんて嫌だ。アリアンナが連れ去られた責任は僕のせいだ。僕がもっと強かったら、恐れを知らなかったらこんなことにはならなかった。僕は死ぬのが怖かった。もっと言えば敵の魔法を受けることさえ。そのせいで、妹は僕が受けるはずだった痛みを今受けているかもしれない。
妹が簡単に薬草の秘密をしゃべるとは思えない。なぜなら薬草の発明は、妹が初めて父に認められた功績であり、ファミリーの一員として初めて手に入れた誇りだからだ。女として生まれたことで戦いの場を与えられず、ふがいない兄を見守り続け、自分にしかできないことを必死に探し、ようやく手に入れた希望の地だからだ。なのに僕は。思考がぐるぐると回り、嫌悪感だけが心の底に沈殿していく。頭をグッと抱え直した時、背後で家の扉が開いた。
「ルチアーノ、話がある」と父が重い声で言った。
兄妹、兄弟、姉妹、姉弟。めんどくさいけど、受け入れるしかないですよね。




