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20.自分の覚悟を考える

20話目! もうちょっとで半分です。

「いつまでお前に厳しいんだろうなボスは」

 会議が終わり、さっさと父が出て行ったあと。みんながそれぞれ雑談している中でこっそり同情してくれたロッソもまた、遊軍だった。

「知らないよ。きっと死ぬまで辛口だよ」

「香辛料屋かよ」

 つまらない冗談も今日は一段と笑えない。ロッソは唇を尖らせて首をひねった。

「俺さ、最近氷魔法を覚えてんの。かっこいいじゃん、氷。つららで敵を蜂のように刺し、慈悲を乞う腕を彫像のように凍らせる。冷酷で勇敢な俺にぴったりだ。でさ、ボスに聞いたんだよ。どうしたら強い魔法が撃てますかって。そしたら」

「そしたら?」

「教えてくれた」

なんだそれ。ずいぶんと優しい態度じゃないか。ほんとに僕だけ否定するんだな。

「俺達、もうそんな役立たずじゃないと思うんだよな。だってファミリーの大ピンチだぜ。余裕ぶってる場合じゃねえんだからさ、秘密兵器温存してどうすんだっての」

 僕がもやもやしてるのを知ってか知らずか、ロッソは明るく愚痴を吐いた。その後も杖をぶんぶん振り回して文句を言っていたら、マッテオに「杖を折るなよ秘密兵器」と頭を叩かれて悶絶した。


 夜になっても気持ちがすっきりせず、僕は真っ暗なオリーブ畑まで来て魔法を練習していた。あの夜、カモメの牙の車に向かって放った特大の火の玉を思い出しながら。あれは僕が今までに見たなかでも相当に巨大な魔法だった。僕には力があるんだ。もしかしたら、特別な力かもしれない。なのに父はそれを認めてくれない。知ろうともしてくれない。考えていたらどんどん悔しくなってきた。杖をグッと強く握り、思い切り振る。大きな炎の塊がオリーブの木めがけて飛んでいく。そのまま木の幹を包み込むかという時、炎はバチンという音とともに消えた。え、何が起きたの?

「島の財産だぜ。燃やされちゃ困る」

 木陰からベルナルドが現れ、結構寒いな、と腕を抱えた。こういうタイミングで現れるのが彼のすごいところだ。自分でも待っていた気さえしてくる。頬が緩んだかもしれないのが恥ずかしくて、無理やりいぶかしげな顔を作った。

「寝れないの?大人なのに」

「夜中に窓の外で明かりがついたり消えたりしてたら寝れねえだろうが」

 ベルナルドはぐるっと辺りを見回して、ずいぶん景気よく燃やしたな、と笑った。僕は黙ったまま突っ立って、彼が何か言ってくれるのを待った。風は少し涼しくてジメッとしている。いつもは気にしない潮の香りが鼻をくすぐった。

「あの夜の戦いは、初陣としちゃ都合が良かった」

 ベルナルドは、よっこらしょ、と畑に腰を下ろした。

「敵の位置は分かってる。一方からしか攻撃は来ない。俺の魔法の防御もあった。何より一番楽だったのは、敵の顔が見えなかったってことだ」

「ベルナルドに守ってもらったのは分かるよ。でもさ」

「自分を甘く見るなよ」

 ベルナルドの言葉は、強く僕をさえぎった。びっくりして目を向けると、彼の目は光っているかのように暗闇の中から僕をとらえていた。

「いいか、俺たちの魔法は人殺しの力だ。それを分かってないと戦いには出せない。殺す相手の顔を目の前にすれば、お前が燃やそうとしているのが物じゃなくて生きた人間だってことを思い知るだろう。そいつの目の光を消すことができるか? それでも容赦を捨てられるか?」

「できると思う…けど……」

「その覚悟はその時になってみないとわからんだろうよ。お前には無理だと言ってるんじゃない。自分を甘く見るなってのは、自分の中の制御装置を甘く見るなということだ。人間ってのは、驚くほど“ちゃんと”してるんだ。覚悟っていうスイッチはそう簡単に入れられるもんじゃない。お前の中で育ってきた道徳を、倫理観を、低く見積もるんじゃねえぞ。」

 制御装置か。それはなんとなくわかった。どんな簡単なことでも一歩踏み出すのは勇気を必要とする。

「お前には強くなってほしい。ボスだってそう思ってるさ。息子が、自分の右腕として活躍してくれたら最高だろ?」

「そうかな。そんなふうには見えないけど」

「そのうちわかるさ。父と息子ってのはこの世で一番めんどくさいんだ。」ベルナルドはそう言ってにやりと笑った。


 できるさ、と思った。島を荒らして、僕らを殺そうとして、ファミリーを消そうとしている奴らだ。敵だ。憎さしかない。僕にできないわけがないんだ。父こそ僕を甘く見ている。

「もやもやしてる」の中には「もやし」が含まれています

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