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19.敵の名前が判明する

19話目に来てくれてありがとうございます

 デュランダの間にファミリーが集められたのは、事件から2週間もたった日の朝だった。父がいつもより険しい顔で出席者の顔を見渡すと、部屋の温度が一気に下がった気がして小さく震えてしまった。


「奴らの名は“カモメの牙”。ここ2年で勢力を伸ばしてきた、本土北部出身の新興ファミリーだ。」

 カモメの牙。ちょっとかっこいい名前だなんて思ってしまった。そんな名前を付けるところが新興勢力らしいし、歴史のあるファミリーでは決してやらないという点で、話が通じないやっかいな相手なのかもしれない。

「上に立つのはサルヴァトーレ・ピレイロ。どうやらまだ30そこそこの若い男らしい。父親が広げてきた革細工の卸業を継いで、強引に販路を広げて稼いでるようだ。」

「高級品の偽物作ったりね。」とベルナルドが補足する。「お金大好きっ子!」

「ベルナルドが集めてきた噂話では」ボスは淡々と続ける。

「もともと本土には革を扱う2つの大きなファミリーがあった。知ってるかもしれないが、トーニファミリーとコルッティーノファミリーだ。だが1年前、コルッティーノのボス、アントニオが病死した。均衡を保っていた二つの家はそこからキナ臭くなり、不安定なところにカモメの奴らが誘いを持ちかけたそうだ」

「誘い?」だれかが思わず聞き返す。


「彼らは、自分たちが味方に付いて相手を倒してしまおう、と両家にささやいた。その後はカモメの羽の上で踊るだけ。操られて抗争になり、お互いに弱体化したところを潰された。もちろん、そのまますっぽり縄張りを得たわけではないが。」

「どうしてですか?」とロッシが無邪気に聞く。

「それを許すほど他のファミリーも馬鹿じゃねえよ。形式上、カモメには権利がある。けれど、持ちつ持たれつってやつを無視させはしねえだろうし、それを無視するほどカモメも馬鹿じゃねえってことだ」年かさのトンマーゾが教授する。

「サルヴァトーレは権利分配を受け入れた。にこにこと笑って譲ったそうだ。だが、そこでこんなことを言ったらしい。」


 父はここで間を置いた。みんなが顔を上げて父を見る。

「“俺を思い通りに扱おうと思うな。我々は近いうちにどんな偉大な魔法使いよりも強い魔法を使えるようになる”と。」

 みんな黙っていた。強い魔法とはなんのことだと考えているんだろう。物語のような古の魔術が蘇ったのか、新しい魔法を生み出そうというのか。

「ボスは心当たり、あるんですか?」

 何気なくミケーレが聞いた言葉に、父はずいぶん黙ったままだった。そして「わからん」とつぶやいた。

「そうですか。まあ、誇張された噂話か、見栄を張った法螺か。本当なら、もう少し耳に入ってもよさそうなもんですしね。」メノッティが空気を和ませる。「わからないのは、なんでウチを狙ったんだってことですね。ステファノを懐柔しようとしたのも奴らでしょう。」

 そうだった。ステファノは僕たちを売ろうとしていた。レーナの父親も使って。オリーブの市場が金額的に魅力的だとは思えない。ましてや市場としての島の価値など。

「オリーブの市場は我々がかなりの割合で仕切っている。安定しているといえば聞こえはいいが、競争がなくなって気が緩んでるのもいるようだしな。金額的なことは置いておいて、狙い目に思われても仕方がない」

 カロジョロが若いものたちを戒めるようにぎょろっと睨む。

「正体がわからないものを勝手に恐れるのはよくないですから。俺は引き続き本土に行って探ってきますよ。」

場をなだめるようにベルナルドが明るく言った。父は長めに息を吐く。

「カモメが我々を狙っていることだけは確かだ。どういう形で戦いが始まるかわからない。各自の役割を怠らぬよう気を付けてくれ。」


 ファミリーの面々に警戒区域が割りあてられ、僕はまたもや遊軍となった。父にそれを命じられた時、今までにないような怒りが込み上げてきて思わず立ち上がったのだけれど、僕が何か言う前に父がこれまた今までにないような強い口調で「座れルチアーノ」と制してきて、僕はそこで怖気づいてしまったのだった。

「うぬぼれるな。お前は何か変わったわけではない。初めて酒を飲んでみた程度の経験にすぎない。自分が強くなった気がしているなら大きな誤りだ。強がりは恥をかくだけだが、自惚れは破滅を呼ぶ」

ボスの言葉は自分で書いてるのに自分に刺さります。言われたくないことをズバッという人。怖い。

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