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童貞と共に人生を捨てたかもしれない

作者: なにらせ

初投稿ですので、暖かな目で見てやってください。


 「お前、敵国の皇女だったのかよ!?」

 §§§


 漢ならきっと一度は通る道。

 平民だったとしても、どこかの王子様だとしても。


 なにをって?


-冒険者だよ


 身分を隠して冒険という破滅的で浪漫あふれるデンジャラスな職業への憧れは

どの身分でも抑えられない。そして一度体験したら、二度とやんねぇわこんなクソゲー、

と匙を大気圏まで投げ飛ばして、《冒険者はクソ》と心に刻み込む。

 おそらく、この世界のどの国、地域でも冒険者の扱いが辛辣なのはそのせいではないかと

俺は勝手に予想している。


 だがその点で俺はマシだった。

 大国の第六王子として生まれはしたが、妾の子。とても王子とは思えんような

悪辣な環境に身を置いていたこともあり、なかなかにひっでぇ扱いを受けてきた。

 とはいえ、平民などからしたらずいぶんといい暮らしをしているのだろう。

ひっでぇ扱いとはいえ、それは王族としてだ。あくまで王子として扱われなかっただけのこと。


 俺が優秀と聞いて、掌を返す連中もそこそこ現れたが。

 そういう連中が俺の派閥を作ろうと、俺は関わるつもりはない。なぜなら、俺は兄上たちが好きだし、今更第六王子派とか言われても勝手にやってろ、としか思えん。普通にうざったいからやめていただきたいが。


 まぁ、そんな感じでストレスの溜まること溜まること。

発散できることも限られているし、じゃぁ性欲でも晴らしゃぁええかと花街にいこうとも、

感染症なんかが怖くて行けない。


 それに、「どっかの王子様は、花街で卒業したらしいよ」みたいな噂が流れたら、軽く10回はタヒねる。

花街で捨てて何が悪いんじゃボケ!先達の英雄たちに土下座しろよクソッたれが!


-閑話(クソみたいな思)休題(いはさておき)

 とにかくストレス発散がしたくて、有り余った力を簡単に使える場所を考えた結果……話がずいぶん戻るが、冒険者になることにした。

 冒険者は簡単に言えば、魔物から民草を守るために力ある者が集った組織……と言うのは建前であり、実際は体の良い何でも屋だ。

 高く売れる素材がとれる魔物は大抵どっかの貴族の騎士団や、金持ちの自警団が生息地を占領しているし、唯一残った浪漫である迷宮に至っては、死亡率八割強だし。


 誰がそんなトコ行くんだよ!

 俺みたいなバカだよ!文句あるか!思いっきり死にかけたきたぞ!生きてる方が不思議だね!


 冒険者になってすぐに迷宮にいったら当たり前のように死にかけたね。

 お行儀の良い型を重視しすぎた儀式用の剣術や魔術なんて通じやしないし、魔物が待てと言って待ってくれるはずがない。死にかけて、冒険者の先輩方に助けて貰ってギリギリ助かった。


 ここから俺は死に物狂いで努力した。

 頑張ればどうとでもなる才能が俺には幸いなことにあったし、迷宮に湧く魔物はちょうど良いサンドバッグになった。

 肌がひりつき、血肉湧き踊る戦い(殺し合い)。魔物を葬る感覚は、俺にとって清涼剤のような物だ。

 

 §§§

「ッハ!この階層には雑魚しかいねぇのか!?おっと、エレーナそっちに一匹行ったぞ!」

「分かってるからそんな大声を出さないで頂戴。うざったいわ」


 馬の下半身に筋骨隆々なおっさんの上半身がくっついた魔物…ケンタウロスを一太刀で切り捨て、相棒にもう一匹の処理を任せる。

 赤髪ロング、顔立ちが非常に整ったスレンダーな女性は、目にもとまらぬ速度でグレイブを振り、こちらも一撃でミノタウロスを仕留める。真っ二つになったミノタウロス二体は、呆気なくその命を散らすこととなった。

 

 「71層、想定よりも圧倒的に弱いな。」

 「足下救われないで頂戴。私がいないと注意散漫でしょう、アナタ」

「お前がいるから俺は注意散漫なんだよ。意図的だから大丈夫。ソロだったら今よりよっぽど慎重に動くって」

 「ッチ」

 

 何で舌打ちすんだよ。

 不機嫌そうに顔を背けた女性……エレーナの表情は計り知れないが、こいつはデフォで不機嫌だからしゃーなし。

 

 -エレーナと組み始めたのは俺が冒険者になって三ヶ月の頃。つまり死にかけてから三ヶ月後だな。

 ソロも悪かねぇが、さすがに限界があることを知った俺は、丁度何も分からず右往左往していたエレーナに声をかけ(ナンパではない。決して)、一緒に迷宮に挑むことにした。

 高飛車で、口が悪くてプライドの高い奴は、どうも周囲から浮いてた。コミュニケーションがとれないパーティほど致命的なモノはないからな。

 俺は王宮で傲慢な口悪貴族の相手をした経験は幾らでもあったが故、対処の仕方はなれていた。だって俺だって口悪いし。仮にも王族に連なる者とは思えないほどに。

 

 まぁ、しかし、エレーナの実力は確かで、連携も悪くはなかった。迷宮につくまで文句を垂れ流していたエレーナでさえ黙るほどに、俺たちの相性は死ぬほど良かった。

 

 そこからは簡単だ。

 互いに戦いが好きで、実力も確か。

 パーティ申請を提出した翌日から週の半分を迷宮で過ごす日々を過ごしていた。

 エレーナは家の都合がつかなかったことも多々あったがそれでも幾度も……組み始めてから三年が過ぎた今でもパーティを組み続け、相棒と認める仲に至った。

 

 たどり着いた先は一級冒険者という地位。

 俺たちは好き放題をしていた。

 

 「少しは骨のある奴がこねぇかね」

 「とはいえ命大事に、よ。ここまで私たちは堅実をモットーに来た。ここまで来てバカをさらすマネは勘弁してほしいわ」

 「分かってるって。焦りは禁物だしな」

 「ひとまず、今日はもう帰るとしましょう」

 「だな。……あ、そうだ、このあと時間あるか?一緒に一杯どうだ?」

 

 このような誘いにエレーナは一度も答えたことがない。

 家の都合らしいので、俺は断られる前提で話しを振っている。

 

 だがしかし-

 

 「そうね……今日くらいはいいかしら。一緒に飲みましょう」

 「え、マジで?ッシャア!今宵は飲み明かそうぜ!」

 「そんなに喜ぶことでもないでしょうに」

 「いやいや、昼くらいは言ったことはあったが、夜に飲むのは初めてだろう。酒の入った会話はまた別格だぞ」

「そうなの?」


夜に飲む酒の良さが分かっていないようだ。これはしっかりとおしえてやらないとなあ。


……女性冒険者を飲みに誘うことには、かなりの割合で夜のお誘いも含まれている。だがそんなつもりは全くとは言わないがほぼないし、こいつもそんな暗黙の了解なんぞ知らんだろう。


これを機に俺達の仲を深めるとするか。


§§§


ッスー …… ヤッチマッタ。


「お、お前その格好は……」

「あっ、えっえーと、そっその私普段は変装の魔道具で姿をかえていたのよ……ダメだったかしら?」

「い、いや、いいとおもうぞ、うん」


何もいいわけがない。

俺は咄嗟に頭を抱えたくなるのを抑えながら、顔を隠す。この引きって真っ青になった顔を見せたくなかったから。


艶やかな美しい藤色のロング。


その髪色を持つのは俺の知っている限り一つしかない。

しかも今のこいつの顔にも見覚えがある。


―こいつ絶賛戦争中の敵国の皇女様じゃねぇか!!!! 


読了ありがとうございます。これから二国間でいろいろ問題になったり、二人の関係に変化があるかもしれないですが、そこはご想像にお任せします。

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