第4話〜人生逆転の予感〜
え?今何がおこったんだ?
「まさか、まさかこの剣を――お主!何者じゃ!?」
「え?いや……」
何が起こったかわからず固まっている俺の肩を両手で掴み揺らしてくる。
何者って?どういうこと?
「荷物持ちですが?」
絞り出した答えがまぬけすぎて恥ずかしい。
「ただの荷物持ちのわけがないじゃろう!ちょっと待つのじゃ――」
ゴソゴソと自身の服をあさりはじめ、何が出てくるのかと思えば片眼鏡。
なんだろう?爺さんはそれを装着してこちらを再び見てくる。
「なんじゃ、壊れよったか?間の悪い……」
「あの?なにか?」
何か見たかったのか?
……まさか何か憑いてるとかないよな?
「お主、魔力値はどれくらいじゃ?」
「いや、あの……数値化不可、でしたが」
「なにを馬鹿なこと――いや、昔聞いたことがあるな。まさかお主が……」
十歳で測定される魔力検査。
その検査において初めて測定不可を出した少年がいた。
低いのではなく高すぎて数値化できないその魔力量に周りから将来を期待された――そう、それがこの俺。
その末路は見ての通り、無能の荷物持ち。
あの時が間違いなく人生の絶頂期だろう。
「ふむ、しかし、それならば説明がつくのぅ」
ムムムと考え込む爺さんになんだろうと身構える。
「あの――」
「よし、お主にその魔剣を委ねようではないか」
「魔剣?」
魔剣ってなんだ?この剣のことか?
「その剣、それは『ダーインスレイヴ』という物でな、持ち主の魔力を喰らう剣なのじゃ」
「魔力を、喰らう?」
え?何それ怖い。
「今まで剣を抜いた強者がことごとく魔力を喰われて落命した」
それを聞いて体がゾワっとする。
でも今は別に体に異常はないが。
「でも今、特に何もないですけど?」
「そうじゃな、恐らくお主の魔力がこの剣が喰らう魔力よりも遥かに多いということじゃろう」
無駄に多い魔力量が初めて役に立ったのか。
「じゃああの黒いオーラはなんですか?」
「抜いて無事なのを見たのは初めてでな、正確にはわからん。じゃが伝わった話では、その剣は喰らった魔力を莫大な力にして解き放つと言われておる」
「つまりあの光は俺の魔力ってことですか?」
「恐らく、そういうことじゃろう」
なんかわからないけど、俺の魔力でああなったのか。
これは――凄いことなんじゃないか?
ドキドキと心臓が脈を打つ。あの時以来の胸の高鳴りだ。
「でもいいんですか?本当に貰っても」
そんな凄い剣ならば高価なんじゃ?
「今までどうするか迷っていたんじゃ、安易に売ることもできないしの。使える者がいるならば使われるのがいいのじゃろう。それが良くも悪くも……いや、願わくば良い事に使われることに越したことはないがな」
「お金はないですよ」
「よい、良いものをみれたしの。荷物も守ってくれた。使えるものに渡るのが剣としてもいいじゃろう」
「もちろんです、ありがとうございます」
これでもしかしたら今までの苦虫を噛む様な人生を逆転できるかもしれない。
剣を天に上げ、まじまじと見る。黒い剣が太陽に照らされ、キラキラととても綺麗に見え、赤い宝石に吸い込まれる様だ。
「じゃあ、早く荷物を拾ってくれ。時間がないのでな」
「えっ?……」
爺さんの声で現実に戻される。周りには散らばった荷物の数々。
――さて……どうしようか。