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第3話〜魔剣〜

 「――のぅ、お主よ」


 「……なんですか?」


 「もしかして戦えたりはするのかの?」


 「荷物持ち担当なんで……」


 「それは、参ったのぅ……」


 道中、両脇に崖のある道にて崖に背を向け冷や汗をかく俺と依頼人の爺さん。


 「おい、早くその荷物寄越せって言ってんだよ」


 前にいるのはバンダナを頭に被り、軽装な服を着た茶赤色の肌を保つ、どこからどう見ても盗賊といったこわい男が十人ほど――つまり、不安が的中したのである。


 「どうしますか?渡しますか?」


 「ならぬ、ならぬぞ」


 渡して見逃してもらうのが最善と思ったが、依頼主が首を縦に振らない。

 周りを見渡しても不幸にも誰も通る気配もない。

 護衛もつけていない行商人なんて飛んで火にいる夏の虫というわけだ。


 ただ依頼人がそう言うのなら、荷物は守らないと。


 「殺されたいのか?あぁん!?――おい、こいつビビって足ガクブルじゃねぇか」


 拳を上にあげあれ、咄嗟に目をつむるが、脅しだったようで仲間とこちらを馬鹿にして笑っている。だがそれは本当の事で足が笑って言うことを聞かない。


 「ほら、渡したら見逃してやるから。さっさとしろよ」


 「できません!」


 「うむ、お前らなんぞにやる物などないわい」


 爺さんも強気だ。

 ギルドを追放されてからの初依頼だ、簡単に諦めるわけにはいかない!


 「よし、5秒数えてやる。それまでに渡すか、ボコされるか決めな。ごー、よーん、さーん……」


 何か策を考えるんだ!何か……いや、何も思いつかない……。


 「にー、いーち……」


 盗賊達が一斉に構える。

 まずい、もうだめだ。

 あんだけ強気だった爺さんも俺の後ろに隠れてしまう。


 「ぜろ――よし、かかれぇい!」


 雄叫びの様な声と共に何人かが飛びかかってくる。咄嗟に顔を守るために腕で防御の体勢をとる。

 

 「――あれ?痛く無い?」


 「なっ!?」


 確かに拳が腕やお腹に当たる感触があるが、痛みはあまり無い。

 もしかして、こいつら弱かったりするのか?


 防御した腕を解いて、目の前の盗賊の顔面を殴る。


 「うぁ!?」


 反撃されると思ってなかったのか、まともに当たって盗賊が仰け反る。


 「コイツ!――ヴッ!」


 次に攻撃にきた盗賊も反対に返り討ちにする。


 「なめやがって!――ゴハッ!?」


 「お主、やるじゃないか」


 次も返り討ちに、これで三人。

 意外とやれている、身体強化は思ってたよりも強いのか?

 よし、このまま――。


 「おい、殺されたい様だな……」


 「え、やば」


 それは反則じゃないか?盗賊達が取り出したのはナイフ。

 明らかにさっきより顔が殺意が満ちている。


 「調子に乗りすぎたな」


 後ろは崖に阻まれているのにジリジリと詰め寄ってくる。

 いやいや、本気でそれは駄目だろ。


 「死ね!」


 ナイフが振り上げるのを見て、駄目だと咄嗟に背を向ける。

 刹那、リュックが切られ、中身が散乱する。


 「おぉ、これは中々……」


 飛び出たものを見て盗賊はニヤリとする。そこには価値のありそうに輝く鉱石や何かの書物など様々なものが散らばっていた。

 こんなに入っていればそれは簡単には渡せないだろう。


 「ちなみに今からこれを渡せばワシらの命は助けてくれるのかの?」


 「ちょっと爺さん――!」


 「いや、もう遅いわ」


 爺さんが問うも流石にここまでなるともう駄目らしい。

 ナイフ舌で舐めてるし、やばい、めっちゃやる気だ。

 やばい、やばい、何か逆転できる方法はないか?見回すと足元に何かがあたる――ん?これは、剣?

 

 足元にあったのは黒い鞘に濃い紫で模様の描かれた剣らしきもの。

 これだ!――急いで拾い上げ、ナイフの攻撃を鞘で防ぐ。


 「お主!それは駄目じゃ!」


 爺さんが言っているが剣を使わなければ万に一つ荷物どころか俺達の命はない。

 相手を弾き返して、抜こうと剣の握りを持つ。


 「駄目じゃ!死んでしまうぞ!やめっ――」


 なんだこの剣は?鞘から出てきたのは黒い剣、剣の根本には赤い宝石が嵌めろれ、抜いた瞬間からオーラの様な黒い光を纏っている。


 「お主、何事もないのか?」


 「え?」


 後ろから驚いたような爺さんの声が聞こえる?剣を抜いただけなのになんでそんな顔をしてるんだ?


 「一斉にかかれ!」


 いや、今はそれどころじゃない。

 剣を持ったことはないが振り向き直り、叫びながら思い切り横に振り抜いた。


 「なっ!?なんだ?」


 視界が黒い光で満たされる。なんの光なんだ?そして鳴り響く衝撃音。

 

 ――光が消え、砂埃が晴れると俺は絶句した。

 そこには抉れた崖。さっきまでいたはずの怖い盗賊達はきれいさっぱりきえていたのである。

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