表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/23

第18話〜ケルンの英雄〜

 イエナさんの言葉に咄嗟に伏せると、金属音の後に小さな石が降ってくる。


 どうやらまだ残った岩があったみたいだ。

 フラガラッハが俺の頭上で踊っている。


 「これで本当に終わりですね」


 「いやぁ、凄いよ!凄すぎる!感動したよ!」


 イエナさんが拍手で称えてくれる。


 「俺自身もびっくりです、まさか一撃なんて」


 「ルークさんはやっぱり凄いですね」


 「ありがとう――ィテテッ、お酒かな、また頭が痛くなってきた」


 飲んだ後に動いたからかホッとした後に頭痛と吐き気が襲ってくる。


 「無理をさせてしまったね。戻ってゆっくり休んでくれ、肩を貸そう」


 「ありがとうございます」


 「私も肩貸します!」


 まさに両手に花……と冗談は言える状態じゃないが、俺は二人に支えられながら帰路に着いた。


 「――んんッ……」


 眩しさに目を開ける。

 窓からは燦々と光が差し込み、外はイベントでもあるのか、人々の声がざわざわと聞こえてくる。


 「ルークさん、起きましたか?」


 横を見るとアテナが居た。

 すぐに気づかないとは相当寝ぼけているらしい。


 「大丈夫ですか?」


 「え?」


 アテナの顔が急に近づき、パッと反応し顔を逸らす。


 「昨夜のこと覚えてますか?」


 昨日は確か、イエナさんのジャイアントゴーレム討伐依頼でケルンに来て――そうか、ジャイアントゴーレムはもう倒したのか。


 おぼろげながら夜の記憶がだんだんと戻ってきた。

 そうか、いつのまにか寝てしまったんだ。

 

 「運んでくれてありがとう」


 「いえいえ全然起きないので心配しましたが、大丈夫そうでよかったです」


 「お?起きていたか、具合はどうだ?」


 イエナさんが部屋に入ってくる。


 「大丈夫です、ありがとうございます」


 二人には心配をかけてしまったようだ。

 やっぱりお酒飲んで、動くのは良くないな。


 「動けそうか?」


 「はい、もう全然大丈夫です」


 「ならよかった。皆が外で待っているから顔を出してやってほしいんだ」


 この外のざわつきはそう言うことなのか。


 「わかりました」


 少し恥ずかしくなってきたな……玄関の前まできてドキドキする。


 「じゃあ、行くよ!」


 イエナにより扉が勢いよく開かれ、パッと破裂音がする。

 一瞬目を閉じて身を逸らせたがどうやら、クラッカーらしい。

 すぐに歓声と大きな拍手が響きわたる。


 「おー!英雄の登場だ!」


 昨日の酒場に居た厳つい冒険者が肩を組んでくる。


 「英雄?言い過ぎですよ――」


 英雄なんてとんでもない。


 「言い過ぎなもんか。Sランクの俺達や他の人でも倒すまで至らなかった奴をお前さんが倒したんだ。あのままだったら都市が潰されていたかも知れない。間違いなくケルンの英雄だ!」


 その言葉に周りがまた一層盛り上がる。

 というか、この人Sランクのすごい人だったのか、それでこんな貫禄があったんだな。

 

 英雄か、荷物持ちだった俺がだいぶ偉くなったもんだ。

 でも気持ちのいいもんだな、いい事をしてこうやってみんなから歓迎されて、これまで経験したことないぐらいに今すごく心が踊っている。


 「ほら、手でも振ってやれ」


 「は、はい」


 耳元で囁かれ、恥ずかしいけど目の前にいるみんなに向け手を振る。

 また歓声が沸き起こりそれに押されて俺の振る手も大きくなった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ