第16話〜決戦前夜〜
「凄い厳戒態勢ですね」
「いつジャイアントゴーレムが目覚めるかわからかいからね」
砂の都ケルンの都市を囲む壁には兵士や冒険者が多く配置されているのが見られる。
「おお、イエナ戻ったか!と、言うことはその二人が?」
都市の入り口で鎧を着た門番に話しかけられる。
「あぁ、魔剣の持ち主だよ。希望の光さ」
「そうか、そうか!頼んだよ!」
「痛ッ――が、頑張ります」
肩をバンバンと叩かれながら手荒い歓迎をされる。
やはりイエナは知名度があるらしい、都市の中でも度々声をかけられている。
砂の都だけあり空気が乾燥しており、少し暑い。都市の建物は石で建てられたものが多く、生えている植物も乾燥地帯で育つものであまり見たことのない見た目をしている。
「戦いの前に今日は歓迎会をするからね」
連れてこられたのはギルド酒場と呼ばれる冒険者が集い、賑わう飲み屋。
インスタノブルにもあり、冒険者達が情報交換やパーティメンバーを探したりしている場所だ。
中に入るとやはり多くの冒険者で賑わっている。
時間ももう夕暮れ、一番賑わい始める時間だ。
「お!イエナだ!」
「はいはい、みんな!聞いて!」
イエナが手を打ち中にいる人みんなが彼女に注目する。
凄い視線だ、なんだな緊張してしまうな。
「ジャイアントゴーレム討伐の協力者を見つけてきたよ!魔剣ダーインスレイヴの持ち主ルークとアテナだ!」
紹介されるとみんながざわつく。
「きっとジャイアントゴーレムを討伐してくれる!みんな歓迎してくれ!」
少しの間ざわつきが治らなかったが、次第に大きな拍手と歓迎の声が響く。
「本当に他にも魔剣があったんだな!」
「うん、色んな所を探してようやく見つけたよ、しかもとびっきりのやつだ」
大きく厳つい見た目の冒険者が近づいて来た。
顔は赤く、もう出来上がっているらしい。
「これが魔剣か、そんなに凄いのか?普通の剣とあまり違わないようだが……」
ダーインスレイヴをまじまじと見てくる。
「やっぱり、こいつも何か代償があるのか?」
代償?
「あぁ、こいつは魔力を喰らう魔剣。普通の人が抜いたらたぶん死ぬよ?」
「本当か?」
俺を見て問う冒険者、なるほど代償ってのはそのことなのか。
「本当です」
俺の回答にまたみんながざわつく。
「そんなに恐ろしい物なのか、ふむ、兄ちゃん見た目によらず凄いんだな」
見た目によらずは余計だ。
「さ、みんな飲んだ飲んだ!今日は私が持つよ!」
イエナの声にみんな大歓声を上げ、一斉に酒の注文が舞っていった。
「君たちも遠慮なく飲んで、君達の歓迎会だ」
「では遠慮なくいただきます」
「あ、私は未成年なので……」
「うん、ならば――」
テーブルに案内され俺はビールを、アテナの前には綺麗な青い飲み物が渡された。
「うわぁ、この飲み物すごくおいしいです!」
インスタノブルにはない飲み物だがおいしいようだ、ビールも少し味が違うがおいしい。
「そうか、それは良かった」
「ところでさっきの魔剣の代償ってイエナさんのフラガラッハにもあるんですか?」
さっきのが疑問に思い、聞いてみる。
イエナさんはおもむろに眼帯を外しながら話しだした。
「フラガラッハの代償は目だ。その代償でフラガラッハは目があるように対象を捉えて自在に動く。私の調べた範囲の他の魔剣と呼ばれる物にもそれぞれ代償があるよ」
まるでナイフで切られた様な傷が、彼女の目に縦に入っている。
目は閉じられ、もう開くことはないようだ。
「そうなんですね」
「――おぅ!飲んでるか!救世主!」
シリアスな空気になりかけた所にケルンの冒険者達が入って来た。
みんな酒を片手に厳戒態勢とは思えない緩んだ表情だ。
そうしてそこからは、酔った冒険者達にもみくちゃにされ、夜が更けていった。
宿が用意され、疲れた体をベッドに沈める。
疲れた――。
「ん?なんだ!地震?」
寝ていたら突如大きな地響きと揺れが襲ってくる。
「ルークさん!」
アテナが隣の部屋から慌てて入ってくる。
その後ろからイエナさんも来た。
「ルーク、すまない――ジャイアントゴーレムが動き出した!」