第12話〜傷だらけの帰還〜
「――クさん!ルークさん!」
呼ぶ声に目を開ける。目の前には泥だらけのアテナの顔。
……そうか、意識をうしなっていたみたいだ。
「大丈夫ですか?」
「う、うん。アテナこそ大丈夫?」
頭が痛いがなんとか動け――。
「イテッ!」
あ、そうか足をやられていた。見ると包帯で巻かれ止血されている。
「一応薬草塗って応急処置はしたのですが、無理はしないでくださいね」
「ありがとう」
アテナがしてくれたみたいだ。痛いがなんとか立ち上がる。
うん、一応歩けそうだ。
「ところで、これはなんでしょう?」
「あー……」
アテナは不気味そうにクルートの遺体を指差す。
改めてみるとだいぶグロテスクな状態だ。
仲間がこうなったらゾイの様な反応をしてしまうだろう。
「これを抜いちゃったんだ」
隣に落ちていたダーインスレイヴを指差す。
「……本当にそんな危険なものだったんですね」
アテナが唾を飲む。
「俺もここまでなるとは思わなかった。ごめんね、こんなもの見せちゃて」
俺がもっと強ければ止められていたかもしれない。
生気のない彼を見て後悔する。
「いえ、ルークさんが悪いわけでは」
でもこの剣の凶悪さがわかった。
俺以外には本当に使えないかもしれない。
「宝箱見て帰ろうか」
「はい、そうですね」
――「あれ?荷物持ちじゃん!」
なんとかインスタノブルに辿り着くと、嫌な人に見つかってしまった。
「クラウスさん……」
金のぼっちゃんヘアをした男がニヤニヤとしながら近づいてくる。
「何?ボロボロじゃないか?ゴブリンにでもやられたか?」
何がおもしろいのか馬鹿にして高笑いをしてくる。
「荷物持ちが魔物討伐なんて無理しちゃ駄目だろ?荷物持ちは荷物持ちの依頼しかできないんだから」
「あなた、ちょっと失礼じゃ――」
「アテナ」
アテナが庇ってくれるがそれを静止する。
「でも……」
「いいんだ。こいつはこういうやつなんだ」
「あれ?お前一丁前に仲間いんの?てか君かわいいね」
クラウスがアテナをまじまじと気持ちるい目で舐め回すように見る。アテナも嫌そうな顔をしている。
「あまり見ないでください……」
「可愛い顔してるのに、このお荷物と一緒のせいで傷ついて可哀想に。よかったら次はこの俺とパーティを組まない?歓迎するよ?今度のワイバーン討伐依頼を終わらせたら時間空くからさ」
「け、結構です。それにルークさんは荷物持ちじゃありません!強い人です!」
「アテナ……」
アテナが尚、強く庇ってくれる。
本当は俺が言わなければならないのに言えなくて情けなくなる。
それを聞いたクラウスがより大きな笑い声をあげる。
「つ、強い?コイツが?ハハハハハハ、これは傑作だ!お前なんか騙してるのか?」
「……騙してなんてないですよ」
「じゃあおかしいだろ、荷物持ちしかできない雑魚が」
「もういいでしょ、行ってもいいですか?」
「いやいやいや、誤解は解いとかないと。お嬢さん、こいつはこの俺のギルド、あのユグドラシルの聖剣を首になった荷物持ちの雑魚なんだよ!」
「そんな事は関係ありません!あなたが知らないだけでルークさんは強いです!さ、行きますよ!」
「ちょっ!――」
アテナに強く引っ張られ、そのまま歩く。
クラウスが後ろでまだ何か言っているが、それよりも痛い――足が痛い!
でもおかげでクラウスから逃れられたみたいだ。
アテナに格好悪いところを見られてしまったな……。