第11話〜魔力ヲ喰ラウ剣〜
「さて、剣も手に入れたし宝箱見て帰るか」
「御意」
相手方三人が宝箱の方に向かう。
そのおかげで俺に背中を向けている。
よし、今だ!一気に踏み込み、クルートに殴りかかる。
「――グアッ!」
「ルークさん!」
仮にもCランクということか。
隙をついたはずなのに隣にいたアレイに察知され、突き飛ばされる。
「ダメじゃないか大人しくしてないと」
「――グハッ!」
クルートの剣が足に突き刺さる。
痛いどころじゃない。叫びたい痛みが襲うが声にもならない。
「【ファイアボール】!」
アテナが攻撃してくれるが、その火球は虚しく前に出たアレイに防がれる。
「お嬢ちゃんそんなんじゃダメよ。【ファイアボール】」
「――キャッ!」
ゾイの火球がアテナに着弾し、後ろに飛ばされる。
駄目だ魔法の威力が違いすぎる。
俺も動けない以上勝ち目がない。
「アテ、ナ!……逃げ、ろ……」
「逃げ、ません!」
「大人しくしてなさい!【ファイアボール】」
「――ヒャッ!」
なんとか起き上がるアテナにまたファイアボールが当たり、さらに飛ばされる。
「まだ、です。【アイスダスト】!」
再び起き上がり魔法を放つアテナ。
しかし、魔法を唱えた瞬間意識がなくなったのか倒れてしまった。
アテナの魔法により、上空から氷の雨が広範囲に振る。
決して大きくない氷の玉だが、それによりクルートが防御のため足から剣を抜いた。
「このッ!」
生きている片足に力を入れ、氷の玉をうけながらもクルートの顔面めがけ拳を飛ばす。
「――クッ!」
よし、拳が入った!
「おい、お前、今俺の顔をなぐったか?この俺の顔を?……許さない、絶対に許さないぞ!」
今までのクルートから表情が一変し、ゾワッとする。
顔を真っ赤にそめ、理性を失ったかのように無茶苦茶な殴りをかましてくる。
「この!このッ!クソがッ!!」
身体強化のおかげで凌げてはいるけど、防戦一方だ。
「クルート、落ち着け」
「放せ!殺す!殺してやる!」
まずいと判断したのかアレイが羽交い締めにして抑えてくれる。
でもクルートは止まらず、解こうと暴れている。
「クルート!」
「うるさい!どけ!」
あのどっしりとした重戦士を振り飛ばしやがった。
「ハァ……ハァ……」
呼吸が荒くなっているが目はまだ野獣の様に俺を睨んでいる。
こいつはまずい、殺されるかもしれない。
さっきまで俺も興奮していたが、いっきに冷静になってしまう。
「あーあ。私は知らないわよ」
ゾイがめんどくさそうに距離をとっていく。
仲間の反応を見ると本当にでヤバイみたいだ。
「なあ、お前」
「な、なんですか?」
「この剣、大事なんだよな?」
ダーインスレイヴを拾い上げて問われる。
「は、はい。大事ですね」
「そうか、そうか。ハハハハハハ」
狂った笑いをするクルート。
こいつ本当に頭イってしまったんじゃないか?
「じゃあコイツで殺してやるよ!」
「なっ!?」
クルートがダーインスレイヴを抜こうとする。
まずい!あの爺さんの言うことが本当なら大変なことになる!
「やめろ!」
大きな声で止めるが、正気じゃない彼の動きは止まらない。
そしてついに――剣が引き抜かれた。
「ガッ!オオオオォォ!アアアアァァ!……グァアアアアアアアアアア!」
「なっ!」
ダーインスレイヴの黒いオーラが奴を飲み込み、絶叫する。
どんどんとクルートの生気がなくなり、ついに倒れる。
絶叫した口は大きく開かれ、目はかっ開かれ、顔は一気に歳を重ねたように水分がなくなりさながらミイラのようだ。
これが魔力を喰らうということなのか?体を構成する必要最低限の魔力まで吸い尽くされているのか?
俺もこうなっていたかもしれないと想像し悪寒がする。
「クルート……な、何よこれ……?」
ゾイが信じれないと言う様に口を手で塞ぐが、次の瞬間嘔吐してしまう。
アレイも何が起きたと言った感じで固まっている。
――今だ。俺はダーインスレイヴを拾い上げる。
「お前らもこうなりたいか?」
剣は次の獲物を狙うかの様に禍々しい黒いオーラを放っている。
「い、いや……なんで……」
ゾイはもう放心状態の様だ。言葉が届いていない。
「ゾイ!逃げる!」
アレイが慌ててゾイに駆け寄り、肩に背負って逃げていった。
「ふぅ……」
二人が見えなくなるのを確認し、剣を納める。
安心したら一気に力が抜けていく、足の痛みも襲ってきた、もう立てない。
視界がぐらつくな……。