第10話〜裏切り〜
「あれがリザードマンなんですね」
「うん」
湿地帯に潜む魔物リザードマンを、草陰に隠れて確認する。
アテナは初めて見るみたいだ。
大きな二足歩行の爬虫類に知能を足したような魔物。
時に人を襲い、人間の持つ武器を上手に扱うことができる。
目の前にいる群れにも弓や、剣や盾と様々な武具を持っている。
依頼によると最近村がこいつらに頻繁に襲われているらしい。
「内容通りざっと二十体ほどか、まあ五人いればどうにかなる――ゾイ」
「えぇ、【ファイアレイン】」
クルートさんの指示でゾイさんの魔法で炎球の雨が降りそそぐ。
火煙が晴れ、見ると二体は倒れているけど、奇襲だったけど思ったより倒せていない。
盾を持つリザードマン達が咄嗟の判断で前に立ち、守ったんだ。
盾のリザードマンの間から弓部隊がこちらに向け弓を構える。
「分かれて迎え打つ」
「はい」
弓矢が放たれると同時に俺とアテナ、クルートさん達で左右二手に分かれて避け、草陰から打って出る。
「アテナは魔法で後方支援を」
「わかりました!【ファイアレイン】」
アテナのファイアレインが降る。
ゾイよりも一つ一つは小さく威力はないが、本命はそれではない。
「よし」
二体の盾を持つリザードマンの意識が上方へ向く。
放たれた弓を剣で落としながら間合いを詰め、隙の出来た胴を打ち、倒す。
俺に気づいた近くのリザードマンは盾を下ろすが、それによりファイアレインに被弾するが、俺の剣はリザードマンの盾により防がれる。
「倒せは、しないか」
火が弱点のリザードマンだが、アテナのファイアレインでは倒すまでは難しそうだ。
俺も身体強化で叩くだけじゃ盾までは砕けないみたい。
離れて、飛んでくる弓矢をなんとか叩き落とす。
「【ツリーバインド】」
盾のリザードマンのを木の根が手の様に掴む。
少し体勢の崩れたリザードマンを打つ。盾に阻まれるが、大きく崩れた。
「いける」
頭部への一撃でリザードマンを倒すことに成功する。
「ルークさん!」
「ウッ――」
矢が肩を掠めた。
アテナの声で反応できなければやられていたかも。
でも、もう盾部隊はいない。
距離を一気に詰め、弓のリザードマンを一体倒す。
このまま残り二体の弓部隊を倒したいところだったが、後ろに退かれ、変わりに剣部隊四体が現れる。
「アテナ、弓部隊まで魔法は届くか?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあそっちを頼む」
「わかりました。【ファイアレイン】」
後ろからまた矢がチクチク放たれるとやっかいだが、その心配はなさそうだ。
「一体目!」
剣が交差するがそのまま剣を折り、叩き倒す。
「二体……三体」
向かってきたリザードマンを倒す。
盾に比べてやりやすい。
「これでラスト!」
最後のリザードマンも倒す。
これで後は弓部隊の二体だけ。
「よっ!と」
と思ったがクルートさんが倒した様だ。
「大丈夫かい?」
「はい、これで全部ですね」
「うん、流石ルーク君だね、すごかったよ」
「ありがとうございます」
Cランクの人から褒められるなんて嬉しい。
「じゃあ、あの宝箱取りに行きましょう!」
「そうだね……でも、その宝箱も僕たちのかな?」
「へっ――」
「ルークさん!」
危なかった、背を向けた瞬間クルートさんの剣が襲ってきた。
なんとか避けたけど、地面の泥濘に足を取られて転けてしまう。
――まさか、裏切られたのか?
「ルークさん、大丈夫ですか?」
アテナがそばにきて心配してくれる。
「あれ、躱されたな。でもまあいいや。大事な剣、離しちゃったね」
しまった、転けた反動で剣を離してしまったみたいだ。
クルートがダーインスレイヴを拾い上げて吟味する。
「ただの荷物持ちが早くDランクになれたのはこの剣のおかげなんだろ?」
「まさか俺のこと――!」
「うん、前から知っていたよ。ユグドラシルの聖剣のお荷物……あ、間違えた荷物持ち君」
くそ、最初からこうするつもりで近づいてきてたのか。